ABSTRACT 49(2-2)
子宮頚癌とその前癌病変におけるEpstein-Barr virus (EBV) 遺伝子の発現:笹川寿之1, 島影美鈴2, 瀬川智也1, 井上正樹1(1金沢大学・医・産婦人科, 2国立大阪病・臨床研)
Expression of Epstein-Barr virus genes in cervical cancer and cervical intraepithelial lesions. Toshiyuki SASAGAWA1, Misuzu SHIMAKAGE2, Tomoya SEGAWA1, Masaki INOUE1 (1Dept. of Obstet./ Gynecol., Kanazawa Univ. , 2Clin.Res.Inst., Osaka Natl. Hosp.)
(目的)EBVのLMP-1, EBNA-2遺伝子は、Bリンパ球や上皮細胞の癌化を誘導する。Human papillomavirus (HPV) 以外のtumor virusとして、EBVの子宮頚癌発生への関与について検討する。
(方法)24例のinvasive cervical cancer (ICC)、23例のcervical intraepithelial neoplasia grades II-III (CIN II-III), 35例のcytologically normal cervices (NCX) の臨床材料を用いて、LMP-1、EBNA-2、EBER-1遺伝子の発現をRT-PCR/ Southern blot hybridization により調べ、EBER-1と BamHI-W をprobe としたRNA in situ hybridization (ISH)と免疫蛍光染色 (IF) によりEBV遺伝子の発現局在部位を検討した。HPV typingはDNA-PCR法により行った。
(結果)RT-PCR解析において、EBER-1 はICC の92% (22/ 24), CIN II-IIIの83% (19/ 23), NCXの46% (16/35) に、LMP-1は ICC の67% (16/ 24), CIN II-IIIの74% (17/ 23), NCX の37% (13/35) に、 EBNA-2は、ICC の42% (10/ 24), CIN II-IIIの43% (10/ 23), NCX の17% (6/35) に発現していた。それぞれの遺伝子の発現の頻度は、NCXに比べCIN やICCで有意に増加していた。子宮頚癌組織ではLatency II 型やIII型の感染が多く、LMP-1, EBNA-2遺伝子の発現が高率であった。ISHやIFの結果、EBV 遺伝子はICCやCIN細胞に発現しており、これらの悪性組織近傍の正常扁平上皮の基底部細胞、頚管腺細胞、浸潤リンパ球にも発現していた。また、HPV DNA陰性の12例のICC, CIN症例のすべてにEBV遺伝子の発現を認めた。
(結論)EBVは、HPVとは独立した子宮頚癌発生の危険因子である可能性が示唆された。