ABSTRACT 59(2-2)
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長崎県ATLウイルス母子感染防止研究協力事業〜10年の成果と今後の展望〜:片峰茂1,2, 木下研一郎1,5, 石丸忠之1,3, 松本正1,4, 日野茂男1,61長崎県ATLウイルス母子感染防止研究協力事業連絡協議会,長崎大・医・2細菌, 3産婦, 4小児, 5対馬いづはら病院, 6鳥取大・医・ウイルス)

Intervention for maternal transmission of HTLV-I in Nagasaki for last 10 years: Consequences and perspectives : S. KATAMINE, K. KINOSHITA, T. ISHIMARU, T.MATSUMOTO, S. HINO (ATL Prevention Program in Nagasaki)

[緒言と方法]長崎県における母乳回避介入によるATLウイルス母子感染防止研究協力事業は開始後10年を経過した。その成果について報告し、今後の展望にも言及する。事業内容は(1)県下全妊婦を対象としたインフォームドコンセントに基づくHTLV-I抗体スクリーニング、(2) キャリア妊婦への母乳回避勧奨、(3)キャリア妊婦よりの出生児追跡調査からなる。
[結果](1)この間延べ 111,912 名(全妊婦の約 70%)のスクリーニングを行い、キャリア妊婦は4,999名(4.5%)であった。このうち約 90% が人工栄養を選択した。(2) 妊婦キャリア率は近年低下傾向にある。(3)母子感染の主経路(80%以上)が母乳であることを証明したと同時に、母乳以外の経路も少数ながら存在することがわかった。(4)授乳期間によって感染率に差はあるが,完全断乳が最も予防効果が高いことがわかった。(5)抗体検査により児への感染を証明できる時期は生後24カ月以降であることがわかった。(6)10年間の事業により、約1,000名の児のキャリア化が防止され約45名の白血病発症が予防できたと推測された。
[考察]このまま経緯すれば長崎県は近い将来ATLを克服できる可能性が高い。長崎県ATLウイルス母子感染防止研究協力事業連絡協議会は本年3月、現体制での事業の続行を決定し、現状に即した事業実施マニュアルの改訂を行うこととした。
[研究協力者]長崎県福祉保健部、日本母性保護産婦人科医協会長崎県支部、長崎県小児科医会