ABSTRACT 65(3)
ウシラクトフェリン(bLF)によるPhIPの大腸発がん抑制作用
関根一則1, 牛田吉彦1, 久原徹哉1, 上原宣昭1, 朴哲範1, 金大中1, 出川雅邦2, 津田洋幸1 (1国立がんセ・研・化学療法, 2東北大・薬・衛生化学)
Prophylaxis of PhIP induced colon carcinogenesis by bovine lactoferrin: Kazunori SEKINE1, Yoshihiko USHIDA1, Tetsuya KUHARA1, Nobuaki UEHARA1, Cheol Beom PARK1, Dae Joong KIM1, Masakuni DEGAWA2 and Hiroyuki TSUDA1 (1Exp. Pathol. & Chemother. Div., Natl. Cancer Cntr. Res. Inst., 2Faculty of Pharm. Sci., Tohoku Univ.)
【目的】bLFはラットのAOMによる大腸発がんを抑制するが、本研究では、PhIPによる大腸発がんに対する影響とPhIPの活性化酵素CYP1A2誘導物質のカフェイン(CAF)との併用による予防効果についても検討した。
【材料と方法】F344雄ラットを用い、第1群は400ppmPhIPを混餌(n=21)、第2群(n=15)は400ppmPhIP+2%bLFを同時、第3群(n=15)はPhIPに1000ppmCAF(一日数杯のコーヒー相当量)飲水投与、第4群(n=15)はPhIP+CAF+bLF、第5, 6群(各n=5)はbLF, CAF、第7群(n=5)は無処置とした。実験は10週で終了し、肝CYP1A2蛋白量と活性、大腸のPhIP-DNA付加体量およびACF数/ラットを測定した。
【結果】第1群のACFは17.0+−5.2個に対し、第2群のPhIP+bLFは10.5+−4.2と減少した(P<0.05)。第3群のPhIP+CAFは26.0+−5.3であり、PhIP単独群より53%増加した(P<0.01)。第4群のPhIP+CAF+bLF投与では16.7+−5.2であり、第3群より減少した(P<0.01)が、PhIP-DNA付加体量およびCYP1A2活性に差異はなかった。第5, 6, 7群にはACFはなかった。
【結論】1) bLFはPhIPによる大腸発がんを抑制した。2) CAFによりCYP1A2を誘導してACFを増加させた群でもbLFは抑制した。3) bLFはPhase I酵素や大腸DNA付加体量には影響を与えず、発がん抑制作用には他の機序の関与が考えられた。(厚生省がん研究助成金、がん克服新20ヵ年戦略研究による)