ABSTRACT 66(3)
COX-2選択的阻害剤ニメスリドによるPhIP誘発ラット乳腺発がんの抑制
中継清一1,2, 太田俊久1, 高橋真美1, 杉江茂幸3, 境美智順4, 杉村 隆1, 若林敬二1(1国立がんセ・研・がん予防、2沢井製薬(株), 3岐阜大医・病理,4久光製薬(株))
Suppression of PhIP-Induced Mammary Tumors by Nimesulide, a COX-2 Selective Inhibitor, in Rats. Seiichi NAKATSUGI1,2, Toshihisa OHTA1, Mami TAKAHASHI1, Shigeyuki Sugie3, Michinori SAKAI4, Takashi SUGIMURA1 and Keiji WAKABAYASHI1 (1Cancer Prev.Div. Natl.Cancer Center Res. Inst., 2Sawai Pharmaceutical Co.Ltd., 3Dep. Pathol. Gifu Univ. Sch. Med., 4Hisamitsu Pharmaceutical Co.Ltd.)
非ステロイド系抗炎症剤(NSAIDs)は大腸等のがん発生を抑制する。しかし、従来のNSAIDsはCOX-1とCOX-2を同時に阻害するため消化管障害を引き起こしやすい。一方、ニメスリド(NIM)は選択的にCOX-2を阻害することにより、副作用が少なく、がん予防薬として有用であると考えられる。我々はNIMがマウス小腸及び大腸がんの発生を抑制することを見いだし、既に報告している。今回、加熱食品由来の発がん物質PhIP誘発ラット乳腺がんに対するNIMの効果を調べた。6週令の雌性SDラットにPhIP (85 mg/kg)を週4回2週間経口投与した。NIMは400 ppmの濃度で飼料に混合して実験開始から24週間連続投与した。試験終了時に屠殺し、乳腺腫瘍の発生率、個数及び大きさを調べた。対照群の腫瘍の発生率は71%であったが、400 ppmのニメスリド投与によって51%に低下した。1匹あたりの腫瘍の個数は対照群で2.6個、ニメスリド投与群で1.2個であり、腫瘍の大きさは対照群で4.1 cm3、ニメスリド投与群で1.1 cm3で、ともに有意な減少が認められた。以上のことから、COX-2選択的阻害剤NIMが乳がんの予防薬として有用であることが示唆された。現在、腫瘍組織でのCOX-2の発現を検討している。