ABSTRACT 70(3)
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緑茶のがん予防効果における相乗作用:菅沼雅美, 岡部幸子, 末岡尚子, 末岡栄三朗, 藤木博太(埼玉がんセ・研)

Synergistic effects of green tea on chemopreventive activity : Masami SUGANUMA, Sachiko OKABE, Naoko SUEOKA, Eisaburo SUEOKA, Hirota FUJIKI (Saitama Cancer Center Res. Inst.)

緑茶のがん予防効果は、基礎的研究と疫学研究によって進められてきたが、最近では、アメリカでがん予防薬としてのPhase I の介入試験が行われている。私共は3H-EGCGを用い緑茶の臓器分布や薬物動態について研究を行っている。昨年、私共は活性がないエピカテキン(EC)がヒト肺がん細胞株PC-9への3H-EGCGの取り込みを促進することを発表した。今回、ECあるいは緑茶のがん予防効果における相乗作用を考え研究を進めた。ECとEGCG、更に、EGCGとsulindacが相乗的にアポトーシスを誘導することを見出したので報告する。EC単独処理はPC-9細胞のアポトーシスを誘導しない。しかし、ECとEGCGを同時に処理すると、EGCG単独に比べ、3〜7倍強くアポトーシスを誘導した。又、EGCGはオカダ酸によるBALB/3T3細胞からのTNF-alphaの遊離を抑制する。この系に、ECとEGCGを同時に加えると相乗的にTNF-alphaの遊離を抑制した。更に、ECGによるアポトーシスの誘導やTNF-alpha遊離抑制もECは促進した。即ち、緑茶のがん予防効果は、それぞれの茶カテキンの総和効果ではなく、相乗作用によるものと考えられる。次に、緑茶の相乗予防作用を他のがん予防薬であるsulindac、あるいは、tamoxifenと検討した。TamoxifenとEGCGの処理は相加的にPC-9細胞のアポトーシスを誘導したが、sulindacとEGCGの処理は、非常に強く相乗的にアポトーシスを誘導した。この結果は、緑茶とsulindacあるいはtamoxifenの併用が、大腸がんあるいは乳がんのより効果的な予防法となる可能性を示唆した。緑茶を飲用する日本のがん患者ではがん予防薬の効果がより強く現れる可能性が推測される。