ABSTRACT 100(4-3)
 一般演題一覧 トップ 


放射線誘発マウスリンパ腫における16番染色体のゲノム解析:小杉伸一,松本康男,張大全,新保俊光,松木淳,斉藤有子,若林雄一,木南凌(新潟大・医・1生化)

Genomic analysis of chromosome 16 in γ-radiation-induced mouse thymic lymphomas:
Shin-ichi KOSUGI,Yasuo MATSUMOTO,Daizen CHO,Tosimitsu SHIMBO,Atsushi MATSUKI,Yuko SAITO,Yuichi WAKABAYASHI,Ryo KOMINAMI(First Dept.of Biochemistry,Niigata univ.)

われわれは、BALB/c系統とMSM系統のF1マウスと各系統に戻し交配したN2マウスに発生した放射線誘発胸腺リンパ腫のLOH解析を行い、16番染色体上に高頻度にLOHを示す領域(TLSR16a)を見出し、昨年度の本総会にて報告した。今回実験に用いたMSMはp53欠損アレルを有しており、その影響について調べたところ、TLSR16aのLOHはp53欠損アレルを持つマウスに発生したリンパ腫に有意に多く認められた。また、12番染色体上の候補癌抑制遺伝子座(TLSR12a)のLOHについては、p53欠損アレルの有無ともTLSR16aのLOHとも有意な相関は認められなかった。一方、同じ系の観察下に発生した皮下腫瘍について検索したところ、そのほとんどがp53欠損アレルを有していたにもかかわらず、TLSR16aのLOHはほとんど認められなかった。したがって、TLSR16a候補癌抑制遺伝子の不活化はTLSR12a候補癌抑制遺伝子の不活化とは独立しているが、p53欠損とは協調してリンパ腫形成に働くと考えられた。TLSR16a候補癌抑制遺伝子は遺伝地図、欠失地図の作製により約0.29cMの領域に存在することが予想され、この領域をYAC、BACで完全にカバーした。現在、ランダムシークエンスによるBACクローンの解析とヒトBACクローンによる相同部位の物理地図作製、パルスフィールドゲル電気泳動法による対側残存アレルのゲノム解析を行っている。