ABSTRACT 106(4-3)
原発性肝癌の全ゲノム領域における欠失の検索: 永井尚生1,M.A. BUENDIA2,P. TIOLLAIS2,江見 充1 (1日本医大・老人研・分子生物,2Institut Pasteur)
Comprehensive allelotype analysis of human hepatocellular carcinomas. H. NAGAI1,M.A. BUENDIA2,P. TIOLLAIS2,Mitsuru EMI1 (1Dept.of Molecular Biology, Institute of Gerontology, Nippon Medical School,2Unite de Recombinaison & Expression Genetique, INSERM U163, Institut Pasteur, Paris, France)
[目的]原発性肝癌のゲノム変化として最近重要視されている染色体部位の欠失 (loss of heterozygosity, LOH) はがん抑制遺伝子の関与を示唆するものであるが、肝癌における包括的、かつ詳細な染色体欠失部位の研究は未だ充分になされていない。そこで高頻度なLOHを示す共通欠失領域を明らかにし、肝発癌に関与するがん抑制遺伝子の存在領域を検索するため、我々は多数のマーカーを用い各染色体に及ぶ高密度な欠失領域地図の作成を試みた。[対象、方法]肝癌120例を対象として、平均20cM間隔で分布する全200個のマイクロサテライトマーカーを用いLOHの有無を解析した。[結果]今回、新たに1q, 2q, 7p, 7q, 8q, 9p, 9q, 14qにおいて有意に高頻度なLOHを見い出した。個々のマーカーの検索では、8p23のD8S277が最も高頻度であった。最も高頻度な染色体腕の欠失は13qに見られ、RB1やBRCA2を含む広範な領域に及んでいた。特に、非癌部肝臓が慢性肝炎である肝癌症例においては肝硬変を伴う例よりも1pと13q、1pと8p、6qと13qの重複欠失は有意に高かった。[結論]既知の遺伝子座を含む領域に加え、新しく見い出されたこれら領域における遺伝子異常が肝細胞の悪性化に関与していることが示唆された。