ABSTRACT 107(4-3)
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多発尿路上皮癌の起源と経時的な遺伝子変異の解析:高橋毅、羽渕友則、赤尾利弥、筧善行、吉田修(京大・医・泌)

Clonal analysis and chronological genetic analysis of multifocal urothelial cancers : Takeshi TAKAHASHI, Tomonori HABUCHI, Toshiya AKAO, Yoshiyuki KAKEHI, Osamu YOSHIDA (Dept. of Urol.,Fac.of Med.,Kyoto Univ.)

〔目的〕膀胱癌を主とした尿路上皮癌には異所性再発や多発性の特徴があることが知られているが、近年、分子生物学的解析により、多発尿路上皮癌は同一のクローン由来であることが示唆されてきた。我々はmicrosatellite marker を用いて、多発尿路上皮癌の起源と遺伝子変異の経時的変化について解析した。
〔対象と方法〕30症例、89個の同時性または異時性(再発)の低異型度異所性尿路上皮癌より、DNAを抽出し、2q,4p,4q,8p,9p,9q,11p,17p上の計20のmicrosatellite markerを用いて、 loss of heterozygosity ( = LOH ), microsatellite shift (= new allele ) を検出した。
〔結果と考察〕遺伝子変異の検出された26例中16例(61%)で多発腫瘍間の変異は一致しており、10例(39%)で一部不一致を認めた。microsatellite shift, 染色体のbreakpoint, LOHのパターンから、少なくとも21例(81%)で、多発腫瘍は同一のクローン由来であると考えられた。経時的な遺伝子変異の追跡から、多発腫瘍の遺伝子変異は再発を繰り返す間も大部分は安定であるが、一部では明らかな腫瘍を形成する前に遺伝子変異の分岐と腫瘍細胞の尿路内の播種が起こっていると考えられた。9番染色体では変異の不一致の頻度は、他の染色体と比較して有意に低く、腫瘍形成の早い段階で変異が起こっていることが示唆された。