ABSTRACT 110(4-4)
RNA結合蛋白Sam68の細胞増殖制御における機能:伊藤道恭、芳賀 泉、李 慶華、藤澤順一(関西医大・微生物)
Functional role of an RNA binding protein Sam68 in the cell- growth control: Michiyasu ITOH, Izumi HAGA, Qing Hua LI and Jun-ichi FUJISAWA ( Dept. of Microbiology, Kansai Medical Univ.)
Sam68 はSrcファミリーチロシンキナーゼのM期特異的な標的蛋白として同定されたRNA結合蛋白である。我々はこれまでに同蛋白が恒常的にリン酸化されているHTLV-1感染T細胞株で、Fyn, Grb-2, Jak-3をはじめとする多くのシグナル伝達蛋白と会合していること、及びJurkatのCD3刺激によりリン酸化が誘導されることから、T細胞シグナル伝達への関与を示した。一方、最近、接触阻止状態で誘導されるalternative splicingによりRNA結合領域を欠失したSam68が細胞増殖を抑制することが示され、シグナル伝達制御におけるRNA結合蛋白としての機能に興味が持たれた。そこで、Sam68のM期特異的リン酸化の機構およびRNA結合性の機能的意義を明らかにする目的で、各細胞周期における細胞内局在性と機能ドメインとの関連を解析した。
線維芽細胞株およびHTLV-1感染T細胞株を用いて、内在性Sam68の細胞内局在性を免疫蛍光染色法で解析したところ、Sam68蛋白はほとんどの細胞で核に局在しており、核膜が消失するM期においてはじめて細胞全体に広がることが示された。活性化Fynでトランスフォームした細胞では、この時期にのみチロシンリン酸化蛋白が細胞質全体に観察されることから、核膜の消失がM期特異的チロシンリン酸化の原因と解釈された。一方、細胞分裂終了後はSam68分子の大部分が核に再移行するが、一部は細胞辺縁部に留まり、Sam68が主にG1期において他のシグナル伝達分子と相互作用している可能性を強く示唆した。現在、種々の分子内欠失変異体を用い、細胞増殖制御に関与する機能ドメインの決定およびRNA結合性の機能的意義を解析している。