ABSTRACT 114(4-4)
 一般演題一覧 トップ 


ストレス蛋白HSP90の細胞周期における機能:橋口明典, 山田健人, 趙 忱, 富岡大策, 南雲春菜, 秦 順一(慶大・医・病理)

Function of heat shock protein 90kDa in cell cycle :Akinori HASHIGUCHI, Taketo YAMADA, Chen ZHAO, Daisaku TOMIOKA, Haruna NAGUMO, Jun-ichi HATA (Dept. of pathol., Sch. Med. Keio Univ.)

【目的】ストレス蛋白の一つであるHsp90は、v-src、cdk4をはじめとする細胞増殖に重要な様々な分子と会合し、その機能を制御していることが明らかとなっている。われわれはこれまでにヒト胎児性癌細胞株の分化誘導系においてHSP90が、その細胞分化と細胞周期の制御に重要な分子であることを見出した。今回は、HSP90の機能を詳細にする目的で、同分子の変異体を作成し、その細胞分化、細胞周期に対する機能を検討した。【方法】1.PCRを用いた突然変異導入法により3種類のHSP90変異体EGFP(μ1〜μ3)を作成した。これら変異体および野生型HSP90のアミノ末端側に、Enhanced Green Fluorescent Protein(EGFP)あるいはmyc tagをつないだ発現vectorを作成した。2.作成した発現vectorをCOS7細胞に遺伝子導入し、その蛋白レベルでの発現と局在を検討した。3.NIH3T3細胞に同様の発現vectorを遺伝導入し、細胞の形態学的変化、細胞増殖能、細胞周期について検討した。【結果・考察】1.HSP90野生型および変異型とEGFPとのキメラ発現vectorは、COS7細胞に対する遺伝子導入で、その発現がflow cytometerおよびwestern blotで確認された。蛍光顕微鏡による観察により、これらの融合蛋白の発現は主に細胞質に認められた。また、myc tagをつけた野生型および変異型HSP90の発現がwestern blotで認められた。2.NIH3T3細胞にこれらの発現vectorを遺伝子導入したところ、EGFP-HSP90μ1を導入した細胞で、多核化およびDNA多倍体化が観察された。以上の結果は、HSP90変異体が野生型HSP90の機能を阻害することにより細胞形態の維持・細胞周期制御に変化をもたらした可能性を示す。