ABSTRACT 119(4-4)
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テロメレース活性の抑制を伴わない細胞老化:田中宏美,久郷裕之,堀川泉,清水素行,押村光雄(鳥取大学・生命・細胞工学、CREST・JST)

Telomerase-independent pathway to cellular senescence in human cells:Hiromi TANAKA, Hiroyuki KUGOH, Izumi HORIKAWA, Motoyuki SIMIZU and Mitsuo OSHIMURA (Dept. Mol. Cell Genet., Sch. Life Sci., Tottori Univ., and CREST・JST)

 微小核細胞融合法を用いた染色体移入により、これまでに10種の染色体上に細胞老化誘導遺伝子の存在が示唆されてきた。例えば、子宮頸部がん細胞株SiHaに2番染色体、腎細胞がん細胞株RCC23およびKC12、または肺腺がん細胞株TS1に3番染色体、絨毛がん細胞株CC1に7番染色体、肝細胞がん細胞株HMC-Li7に10番染色体、そして膀胱がん細胞株H15に11番染色体を移入すると、細胞は老化特有の巨大化・扁平化した形態を示し、一定の分裂回数の後、増殖を停止した。分裂を停止した細胞において老化マーカー(β-galactosidase)の誘導が確認されたことから、この現象は正常染色体の移入により細胞老化プログラムが再開されたことが示唆される。一般に、染色体のテロメアが細胞の分裂寿命を規定しており、テロメアの短縮を伴って細胞は老化することが知られていることより、上記の細胞老化現象がテロメレースの不活化によるものかどうか検討したところ、細胞老化に伴いテロメレース活性の抑制が認められるものと認められないものとがあった。これらの事実から、細胞老化にはテロメア・テロメレースに依存する経路のみならず、テロメア長の短縮とは無関係な経路が存在していることが明らかになった。