ABSTRACT 120(4-4)
ヒト2番染色体2q37領域の細胞老化遺伝子の探索:中山祐二,上島宗之,久郷裕之,押村光雄(鳥取大・生命・細胞工学、CREST・JST)
Searching for a putative cellular senescence gene on the human chromosome 2q37 region:Yuji NAKAYAMA, Hiroshi UEJIMA, Hiroyuki KUGOH, and Mitsuo OSHIMURA ( Dept. Mol. Cell Genet., Sch. Life Sci., Fac. Med., Tottori Univ., and CREST・JST )
現在までに、微小核細胞融合法を用いた染色体移入実験から、10種以上のヒト正常染色体上に細胞老化遺伝子の存在が示唆されているが、未だその単離には至っていない。我々は今までにヒト正常2番染色体2q37領域に、ヒト子宮頚部がん由来細胞株(SiHa)の細胞老化を誘導する遺伝子の存在を示唆してきた。一方、今までにクローニングされてきているがん抑制遺伝子の多くが、がん組織中で高頻度に欠失していることが明らかにされてきており、細胞老化遺伝子もまた同様にがん組織中で欠失している可能性が考えられる。そこで我々は2q37領域由来の多型マーカーを用いて、7つの異なったがん組織におけるLOH(Loss of Heterozygosity)を解析した。その結果、解析した全てのがん組織のDNAにおいて、低頻度ながらもLOHが認められた。さらに、この2q37領域に存在する49個のEST(Expressed Sequence Tag)を用いて、ヒト正常ケラチノサイトを対照にSiHa細胞での発現パターンを解析した結果、互いに近接した4つのESTにおいてSiHa細胞特異的に発現が失われていた。以上の結果は、これらのESTマーカー近傍に細胞老化遺伝子が存在することを強く示唆しており、遺伝子クローニングを目指して、現在この領域のより詳細な解析を進めている。