ABSTRACT 138(4-6)
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ヒト骨髄芽球性白血病細胞ML-1の分化誘導剤併用による相乗的 テロメラーゼ活性の低下とその機構解析:真野泰成,斎藤靖浩,清水貴壽,武田 健(東京理科大・薬・衛生化)

Combination effect of differentiation inducers on telomerase activity in human myeloblastic leukemia ML-1 cells : Yasunari MANO,Yasuhiro SAITO,Takahisa SHIMIZU,Ken TAKEDA (Dept. Hygiene-Chem., Fac. Pharmaceut. Sci.,Sci. Univ. Tokyo.)

【目的】テロメラーゼは染色体末端に位置するテロメアDNAを触媒する酵素で、細胞の癌化、不死化との関連が示唆されており、癌の悪性度の新しいマーカー、あるいは治療の標的分子として注目されている。そこで、我々はヒト骨髄芽球性白血病細胞株ML-1 の分化誘導時における悪性度の変化について、テロメラーゼ活性を測定し検討した。また、テロメラーゼ関連遺伝子の発現変動について検討を行った。【方法】ML-1 細胞をATRAとGM-CSFの併用で顆粒球方向へ、またホルボールエステルTPAとビタミンD3誘導体 KH1060の併用でマクロファージ方向へ分化誘導させた。この2系統の分化誘導に伴って現われる分化マーカーとテロメラーゼ活性 ( TRAP assay ) を測定した。また、テロメラーゼ関連遺伝子の発現変動について 解析した。【結果】1) GM-CSFとATRAの併用でML-1細胞は相乗的に顆粒球方向へ分化誘導した。それに伴ってテロメラーゼ活性も相乗的に抑制され、6日後には対照の18%になった。このとき、テロメラーゼ関連遺伝子の hTRT ( human telomarase reverse transcriptase subunit gene) の発現が酵素活性に先行して、低下した。2) TPAとKH1060の併用でML-1細胞は成熟したマクロファージ様細胞に分化誘導した。このとき、テロメラーゼ活性が著しく抑制され、7日後には対照の約5%に低下した。【考察】分化誘導剤の併用で、効果的にテロメラーゼ活性を低下させることができた。このとき hTRTの発現が先行して低下することが明らかになった。以上、癌細胞の分化誘導による悪性度の低下が示唆された。