ABSTRACT 141(4-6)
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微小環境ストレスによるテロメラーゼ活性制御:清宮啓之, 大原智子, ナサニ・イマド, 鶴尾隆1,2癌研・癌化療セ, 東大・分生研)

Differential Effects of Microenvironmental Stresses on Telomerase Activity in Human Cancer Cells: Hiroyuki SEIMIYA1, Tomoko OH-HARA1, Imad NAASANI1, and Takashi TSURUO1,2 (1Cancer Chemothr. Ctr., Jpn. Fdn. for Cancer Res., 2Inst. Mol. Cell. Biosci., Univ. Tokyo)

固形腫瘍内部の癌細胞は血行不全によって生じる微小環境ストレスを受けることが多い。将来、癌治療薬としてテロメラーゼ阻害剤を用いる場合、標的癌細胞のテロメラーゼ活性が微小環境ストレスによってどのように変化するかを把握しておく必要がある。我々はこれを明らかにすることを目的とし、卵巣癌A2780細胞、大腸癌HT-29細胞、骨髄性白血病U937細胞を無血清、低pH、無酸素といった種々のストレス存在下で培養した後、各細胞のテロメラーゼ活性をTRAP法にて測定した。その結果、固形癌細胞A2780・HT-29において無血清・低pHによる活性の低下、低酸素による血清依存的な活性の上昇が認められた。興味深いことに、U937はこれらのストレスによって細胞周期の G0/G1 期停止を最も明瞭に起こす細胞株であったが、このとき同細胞内のテロメラーゼ活性は変化しなかった。また、A2780・HT-29におけるテロメラーゼ活性の低下は同酵素触媒サブユニット遺伝子hTERTの発現低下と相関を示した。一方、低酸素による同活性上昇はc-fos、c-junの発現誘導と対応し、MAPキナーゼカスケードの関与が示唆された。事実、MEK1阻害剤であるPD98059は低酸素によるテロメラーゼ活性の上昇を阻害した。以上の知見はストレス応答とテロメラーゼ活性制御系の結び付きを示し、腫瘍内微小環境がテロメラーゼ阻害剤の効果に影響を与える可能性を示唆するものである。