ABSTRACT 142(4-6)
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脳神経系発育とテロメラーゼ発現−グリオーマ発生との関連−平賀章壽、大西丘倫、泉本修一、有田憲生(阪大・医・脳外)

Regulation of telomerase activity in developing brain: Shoju HIRAGA, Takanori OHNISHI, Shuichi IZUMOTO, Norio ARITA (Dept. of Neurosurg. Osaka Univ. Med. Sch.)

[目的]胚細胞、幹細胞および悪性腫瘍細胞ではテロメア複製酵素であるテロメラーゼが活性を持ち、それらの無限増殖能に関与している。ラット脳神経系におけるテロメラーゼ活性の加齢に伴う発現変化を調べ、神経系幹細胞の分化とグリオーマ発生との関連を検討した。[材料と方法]在胎20日、生後1,3,5,7,14,21,28,56,105日のラット脳組織を液体窒素下に凍結して皮質、白質、基底核、嗅索、視神経などを分別採取した。また、冠状縫合付近で厚さ1mmの冠状断切片を作り、側脳室外側壁から厚さ1mm毎に組織を切り出した。更に、胎児および幼弱ラット脳のニューロンと各種グリア細胞を純培養した。これらの蛋白分画から、TRAP法を用いてテロメラーゼ活性を測定した。[結果と考察]胎児や幼弱ラットでは、いずれの脳部分でもテロメラーゼ活性を認めたが、生後14日頃よりその活性は急速に低下し、生後28日では嗅神経、視神経、側脳室周囲2mmの範囲に、更に生後56日では嗅神経と側脳室より1mmの範囲のみに活性は限局した。培養系では、ニューロンには活性がないのに対して、アストログリアは活性を維持して不死化した。また、オリゴデンドロサイトは分化に伴って活性が消失した。ラットグリオーマ化学発癌では、加齢に伴う腫瘍発生頻度の低下や、側脳室周囲細胞との関連が知られ、また私たちは不死化アストログリアの易腫瘍化を報告しており、テロメラーゼ活性の維持とグリオーマ発生との関連が示唆される。