ABSTRACT 143(4-6)
細胞不死化過程におけるテロメア動態−ヒトと齧歯類との比較:児玉靖司,鈴木啓司,渡邉正己(長崎大・薬・放射線生命)
Telomere dynamics during immortalization in cell culture - Comparative study on human cells and rodent cells : Seiji KODAMA, Keiji SUZUKI, Masami WATANABE (Lab. Radiat. Life Sci., Schl. Pharm. Sci., Nagasaki Univ.)
【目的】ヒトと齧歯類細胞の不死化頻度の違いを、両者のテロメア動態の制御機構の違いで説明可能か否かについて検討する。【材料と方法】ヒト、マウス、ラット、及びハムスターの胎児由来細胞を継代培養し、細胞分裂に伴う増殖率、テロメレース活性、テロメアサイズの変化を調べた。【結果と考察】ヒト、マウス、ラット、ハムスター胎児細胞の不死化頻度は、それぞれ、0%、100%、100%、70%であった。また、テロメレース活性陽性頻度が、ヒト胎児細胞では約40%であったのに対し、齧歯類胎児細胞では3種類とも100%であった。テロメレース活性は、ヒト胎児細胞では細胞分裂に伴い急速に消失したが、齧歯類胎児細胞では、緩やかに低下し、その後不死化とともに再活性化された。細胞分裂に伴うテロメアサイズの短縮率はヒト細胞で特に大きく、分裂停止時で約7kbまで短縮したが、マウス、ラットでは40kb、ハムスターでは15kb以下にはならなかった。以上の結果は、ヒトと齧歯類ではテロメア動態の制御機構が異なることを示唆している。齧歯類細胞の不死化頻度が高い理由は、初期のテロメアサイズが長く、加えてテロメレースが再活性化されやすいことによって、テロメアが限界点まで短縮しないことに起因する可能性が高い。