ABSTRACT 172(4-9)
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p53遺伝子導入によるアポトーシスへのFas/Fasリガンドシステムの関与:深澤拓也, 藤原俊義, 片岡正文, 西崎正彦, 門脇嘉彦, 邵 江華, 日伝晶夫, 田中紀章(岡山大・医・一外)

Differential involvement of the CD95 (Fas/APO-1) receptor/ligand system on apoptosis induced by the wild-type p53 gene transfer in human cancer cells:Takuya FUKAZAWA, Toshiyoshi FUJIWARA,Masahumi KATAOKA, Masahiko NISIZAKI Yoshihiko KADOWAKI, Jianghua SHAO, Akio HIZUTA, Noriaki TANAKA. (1st Dept. Surg., Okayama Univ. Med. Sch.)

米国で進行中のp53遺伝子治療の臨床試験では、アポトーシス誘導による腫瘍縮小などの臨床効果が観察されている。その作用機構の解析は、現在のstrategyを改良し、より有効な治療法としての確立のために不可欠である。近年、アポトーシスのシグナル伝達におけるFas/APO1 (CD95)レセプター/リガンド・システムの重要性が注目されている。われわれは、p53依存性アポトーシスにおけるFasおよびFasリガンド(Fas-L)の関与を検討した。アデノウイルスベクターによるp53遺伝子導入により、ヒト非小細胞肺癌細胞H1299およびヒト大腸癌細胞DLD-1で急速に誘導されるアポトーシスが認められた。いずれの細胞株も表面にFasを発現しており、またp53遺伝子導入で24時間をピークとする一過性のFas-Lの発現増強がみられた。しかし、Fasを活性化する抗Fas抗体に対する感受性は異なっており、H1299細胞のみでアポトーシスが観察された。さらに、Fas-Lのブロッキング抗体を用いた実験では、p53遺伝子導入によるアポトーシスはH1299細胞でのみ阻害された。したがって、H1299細胞においてはp53遺伝子導入により発現増強されるFas-Lがアポトーシス誘導に関与しているが、DLD-1細胞ではp53遺伝子により起動される他の経路がアポトーシスの誘導に重要な役割を果たしていると考えられる。これらの結果は、p53遺伝子導入によるアポトーシス誘導のメカニズムの多様性を示しており、治療としての有用性が示唆される。さらにin vivoでは過剰に発現したFas-Lによる好中球浸潤がアポトーシスを誘導している可能性があり、bystander effectへの関与を含めて現在検討中であり、その結果についても報告する。