ABSTRACT 174(4-9)
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アデノウイルスE1Aと分化抑制因子Idの共発現によるp53変異細胞でのアポトーシス誘導:八下田 美佳、中島 琢磨、小田 鈎一郎(東京理科大・基礎工・生物工)

Coexpression of adenovirus E1A and Id proteins induces apoptosis in rat cells expressing mutated p53: Mika YAGETA, Takuma NAKAJIMA, Kinichiro ODA (Dept. of Biol. Sci. and Technol., Sci. Univ. of Tokyo.)

変異型p53を発現するラット3Y1細胞に、ホルモン誘導性プロモーターを付加したE1A 12S、Id-1H、Id-2H cDNAを導入して樹立されたEId10細胞は、デキサメタゾン投与によりこれら3遺伝子を発現しアポトーシスを誘導する。E1A、Idをそれぞれ単独で発現させた場合にはアポトーシスは誘導されない。これら3遺伝子および変異型p53をそれぞれ構成的に発現するベクターを作製してp53-/-マウス小脳由来細胞A40に一過性に導入し、アポトーシス誘導と変異型p53の同時発現の影響をFACSにより解析した。その結果、E1A単独またはE1AとIdの発現によりアポトーシスが誘導されるが、E1A単独で誘導されるアポトーシスは変異型p53の発現により抑制されるのに対して、E1A、Idにより誘導されるアポトーシスは逆に変異型p53の発現により促進されることが分かった。EId10細胞抽出液を用いた免疫沈降法により、Idは主にE1A、bHLH転写因子E2A(E12/E47)と結合し、pRBとは殆ど結合しないことが分かった。E1A、Idの発現誘導後EId10細胞はS期に蓄積し、G2期に移行することなく死滅する。変異型p53 存在下でのE1AとIdの発現がS期進行の異常を引き起こし、アポトーシスを誘導すると推測される。現在、ヒドロキシ尿素によりG1/S期に同調したEId10細胞の抽出液を用いて、S期に特異的なDHFR、RNR、PCNA遺伝子の発現レベルの変化、サイクリンE/cdk2、サイクリンA/cdk2によるE2F-1/DP1およびIdのリン酸化とDNA複合体形成との関連を解析中である。