ABSTRACT 176(4-9)
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E2F-4の過剰発現によるアポトシスの誘導:馬替純二、中嶋啓雄*、三井洋司**(産業創造研究所、*京都府立医大・2外、**工技院・生命研)

Apoptosis by ectopic expression of E2F-4. Junji MAGAE, Hiroo NAKAJIMA*, and Youji MITSUI** (Inst. of Res. & Innovation, *2nd Dept. of Surgery, Kyoto Pref. Univ. of Med., **Natl. Inst. of Biosci. & Human-Technol.)

(目的)E2Fは細胞の増殖と死を制御する主要な転写因子であり、現在までに6つのE2F蛋白質と3つのDP蛋白質が同定されている。E2F蛋白は構造的、機能的にE2F-1-3とE2F-4,5に大別される。我々はCHO細胞にE2F-1とDP-1を過剰発現させることによりアポトシスが誘導されることを示してきた。今回はE2F-4の過剰発現による細胞増殖に対する影響を検討した結果を報告する。
(方法と結果)E2F-4をtetracycline依存的発現ベクターに組み込み、安定遺伝子導入株をクローン化した。この細胞からtetracyclineを除くと約8時間でE2F-4蛋白質が細胞質に過剰発現されたが、E2F-1の過剰発現に認められるS期導入とpRb/E2F複合体の蓄積、DP-1の過剰発現に認められるG1 arrestとユビキチン化蛋白の蓄積は認められなかった。しかし24-48時間で細胞の球形化、核の分葉化、DNAの断片化が認められ、アポトシスの誘導により増殖が顕著に抑制されることが明らかになった。この時E2F-4の発現と相関して、リン酸化c-junに対するモノクローナル抗体で認識される45kDaの蛋白質が誘導された。この蛋白質は細胞質においてE2F-4とcolocalizeし、免疫沈降によりE2F-4とassociateしていることが示された。
以上の結果よりE2F-4の過剰発現はDP-1、E2F-1の過剰発現とは全く異なる機構によりアポトシスを誘導すること、このアポトシスにc-junの活性制御が関与することが示唆された。本研究はバーモント大学医学部、ニコラス H. ハインツ教授、張英彩博士との共同研究である。