ABSTRACT 177(4-9)
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NPM-MLF1による骨髄異形成症候群発症および白血病化の分子機構:加藤規子、福原資郎、加藤順也関西医大・一内、奈良先端大・バイオ)

Apoptosis induced by the myelodysplastic syndrome-associated NPM-MLF1 chimeric protein : Noriko YONEDA-KATO1, Shirou FUKUHARA1, Jun-ya KATO2 (1First Dept. of Int.Med., Kansai Med.Univ., 2Nara Inst. of Sci. and Tech.)

NPM-MLF1を原因遺伝子とするt(3;5)(q25.1;q34)転座は、骨髄異形成症候群(MDS)の段階を経て急性骨髄性白血病(AML、M3以外)に至ることを特徴とし、多分化能幹細胞段階での機構異常が示唆されている。我々は、白血病細胞株K562へのNPM-MLF1遺伝子導入発現により、アポトーシスによる細胞死が誘導され、マウス線維芽細胞NIH3T3への導入においても同様に細胞死が誘導されることを見いだした。欠失変異体をもちいた解析から、核局在シグナル(NLS)を有し核と細胞質とのシャトル蛋白であるNPMとキメラを構成することにより、細胞質蛋白であるMLF1が核に移行することが細胞死の誘導に必須であること、またMLF1蛋白のN端33〜125 a.a. にアポトーシス誘導のための必須ドメインが存在することが解った。さらに、Bcl-2の導入発現によりNPM-MLF1を介する細胞死は回避されるばかりでなく、細胞はS 期に入り増殖傾向を示した。
これらの所見は、NPM-MLF1キメラ蛋白は細胞分化を細胞死誘導により阻害することによりMDSという無効造血状態を引き起こし、さらなる付加的異常を伴って細胞をがん化に導くことを示唆しており、MDSを経てAMLに至る多段階発がん機構の一つのモデルとして有用と考える。