ABSTRACT 201(5-1)
B型肝炎ウイルスDNAの細胞DNAへの組込み部位に結合する細胞因子: 林 恭行、中西 真弓、北村 由之、小池 克郎(癌研・研・遺伝子)
Cellular factors bound to the hepatitis B virus DNA- integrated cellular DNA:Yasuyuki HAYASHI, Mayumi NAKANISHI, Yoshiyuki KITAMURA, and Katsuro KOIKE (Dept.of Gene Res., The Cancer Inst., JFCR)
B型肝炎ウイルス (HBV) DNAの細胞DNAへの組み込みは、肝癌の発症と密接に関連していると考えられている。最近、非正統的複製により生じた直鎖状 HBV DNAが非相同的組換えにより環状化することが明かとなり、同じメカニズムを用いて細胞 DNAに組込まれるモデルが提唱されている。実際、直鎖状 HBV DNAの両末端領域で細胞 DNAに接続していることが多い。我々は、細胞 DNAへの組込みに関与する細胞因子を明らかにする目的で、直鎖状DNAの両末端に結合する細胞因子の検出を試みた。その結果、直鎖状 DNAの一端に転写因子 Yin and Yang 1 (YY1) が他端にIntegration Site Binding Protein 4 (ISBP4)が結合していることを明らかにした。ISBP4 を精製したところ、100 kDaの蛋白質であり、転写因子Octamer Binding Protein 1 (Oct1) と同一の性状を有することが明らかとなった。さらに 、HBV DNAの組込み部位のウイルスDNA領域にYY1が結合し、細胞 DNA領域にISBP4が結合している例が多いこともわかった。得られた知見は、直鎖状 HBV DNAの環状化と同じメカニズムにより細胞 DNAに組込まれるという上記のモデルを支持しているのみならず、YY1と Oct1が HBV DNAの細胞 DNAへの組込み機構に関与している可能性を示している。