ABSTRACT 225(5-3)
ヒト膵癌における6q21の500-kbの共通欠失領域の詳細な解析:阿部忠義1,2,牧野直彦1,古川徹1,福重真一1,八岡利昌1,2,砂村真琴2,小針雅男2,松野正紀2,堀井明1(東北大・医・1分子病理,2一外)
Detailed analysis of a 500-kb region of common allelic loss on 6q21 in human pancreatic cancer: Tadayoshi ABE1,2, Naohiko MAKINO1, Toru FURUKAWA1, Shinichi FUKUSHIGE1, Toshimasa YATSUOKA1,2, Makoto SUNAMURA2, Masao KOBARI2, Seiki MATSUNO2, and Akira HORII1 (Dept. 1Mol.Pathol., 2Surg. I, Tohoku Univ. Sch. Med.)
ヒト膵癌において,現在までに,K-ras, p16, p53, SMAD4などの異常が報告されているが,膵の発癌過程はまだあまり明らかではない。膵癌の発生・進展に関与する遺伝子異常を解明するため,我々はマイクロサテライトマーカーによるPCR法やCGH法を用いて膵癌における染色体・遺伝子の量的異常を調べ,6qをはじめいくつかの未知の癌抑制遺伝子の局在候補領域を同定した。この内,6qでは3箇所の共通欠失領域を同定し,昨年の本学会において報告した。今回,その中でも最も高頻度(69%)のLOHを認めた6q21の領域(D6S449-D6S283)に注目し,YAC,BAC,cosmidを用いてこの共通欠失領域を含む,D6S1543からD6S434におよぶ約1-Mbのphysical mapを作成した。共通欠失領域は単一のYACクローンに完全に含まれ,さらに,互いに重なった3個のBACクローンでカバーされており,最大限500-kbであるものと考えられた。同領域は,リンケージ解析によりhereditary mixed polyposis syndrome(HMPS)の原因遺伝子が存在していると考えられる領域(D6S434-D6S301)の中にあり,また,他の癌における高頻度欠失領域とも重なっているため,この領域の癌抑制遺伝子の異常は膵癌のみならず複数の癌の発生・進展に関与している可能性が示唆される。YAC,BAC,cosmidによるcontigをもとにSTS,ESTのマッピング,ならびに制限酵素地図の作成,更に詳細なphysical mapを作成し,遺伝子同定に向けて解析を進めているので報告する。