ABSTRACT 241(5-5)
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肝癌におけるβ-カテニン遺伝子の異常: 三好康雄1, 岩尾恭子1, 長澤豊1, 佐々木洋2, 今岡真義2, 村田賢3, 太田俊行3, 島野高志3, 中村祐輔1・41阪大・バイオセ・臨床遺伝 , 2大阪成人セ・外 , 3市立池田病・外, 4 東大・医科研・ヒトゲノムシークエンス解析分野)

Frequent activation of the β-catenin gene in primary hepatocellular carcinomas: Yasuo MIYOSHI1, Kyoko IWAO1, Yutaka NAGASAWA1, Yo SASAKI2, Shingi IMAOKA2, Masaru MURATA3, Toshiyuki OHTA3, Takashi SHIMANO3, Yusuke NAKAMURA1・41Dept.of Clinical Genetics, Osaka Univ., 2 Dept.of Surg.Osaka Med.Center for Cancer, 3 Dept. of Surg. Municipal Ikeda Hosp., 4 Lab. Mol. Med., Hum. Genome Center, Inst. Med. Sci., Tokyo Univ.)

肝癌では高頻度に細胞接着因子であるE-カドヘリンの発現低下が認められている。 E-カドヘリンの細胞内ドメインと結合するβ-カテニンは、Wntシグナル伝達系の構成因子であり、大腸癌やメラノーマにおいてエクソン3のリン酸化部位(セリンあるいはスレオニン)のアミノ酸変化やエクソン3の欠失が報告されている。今回、肝癌においてβ-カテニン遺伝子異常を検討した。外科的に切除された肝細胞癌75例を対象に、RT-PCR-SSCP法にてβ-カテニンの全領域を検索した。なお、エクソン2から4までの領域はゲノムDNAをPCRで増幅し、欠失の有無を調べた。その結果、12例においてエクソン3のミスセンス変異;リン酸化部位(コドン33、41、45)の変異6例、非リン酸化部位のコドン32あるいは34の変異6例、さらに、2例においてはエクソン3の51bpと150bpの部分欠損を認めた。また蛋白解析が可能であった5例(ミスセンス変異4例、欠失1例)においてウエスタン法を行ったところ、β-カテニン蛋白の蓄積が認められた。これまでに変異の報告されているセリン、スレオニンのリン酸化部位のみならず、コドン32、34に生じた異常もβ-カテニンの分解阻害と安定化を引き起こすことが明らかとなった。β-カテニンの変異による蛋白の過剰発現が、多くの肝癌の発生あるいは進展に関与している可能性が示唆された。