ABSTRACT 252(5-5)
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神経線維腫症2型(NF2)遺伝子産物の細胞内における腫瘍抑制機構の解析:荒木令江1, 古閑比佐志1, 竹島秀雄2, 内田和彦3, 花井修次3, 徳王宏1, 木村麗新1, 中尾光善1, 西徹2, 三輪正直3, 三森経世4, 貝淵弘三5, 佐谷秀行1 (1熊本大・医・腫瘍, 2脳外, 3筑波大・医・基礎, 4慶応大・医・内, 5奈良先端大・細胞内情報)

Analysis of cellular function of Neurofibromatosis Type 2 (NF2) tumor suppressor gene product: Norie ARAKI1, Hisashi KOGA1, Hideo TAKESHIMA2, Kazuhiko UCHIDA3, Shuji HANAI3,Hiroshi Tokuo1, Yoriyoshi KIMURA1, Mitsuyoshi NAKAO1, Toru NISHI2, Masanao MIWA3, Tsuneyo MIMORI4, Kozo KAIBUCHI5, Hideyuki SAYA1 (1Dept. Tumor. Genet. Biol.2 Dept. Neurosurg., Kumamoto, Univ. Sch. Med, 3Inst. Basic. Med. Sci, Univ. Tsukuba, 4Dept. Internal. Medicine, Keio. Univ. Sch. Med., 5Div. Signal. Transduction, Nara Inst. Sci. Tech .)

【目的】NF2遺伝子の異常による脳神経系腫瘍形成機構を解明するため、NF2遺伝子産物(merlin)の細胞内における機能解析を行っている。今回, merlinを介してシグナル伝達に関わる, merlin会合性の細胞内蛋白質を単離・同定し, これらの分子の細胞内における相互作用と動態を解析した。【方法】GST-merlin融合蛋白質固相化カラムを用い, 牛脳抽出液よりmerlin結合性蛋白質の単離・精製を行った。単離した蛋白質は断片化・精製後, 各ペプチドのアミノ酸配列を決定した。merlinと結合蛋白質の相互作用解析は, ヒトastrocytoma細胞(U251), 及びHA-, myc-, GFP-merlinの強制発現細胞(Cos7,VA13, Hela)の各抗体を用いた免疫沈降・Western-Blotting, 及び共焦点レーザー顕微鏡解析に依った。相互結合部位の決定は各種GST-, thioredoxin- fragmentを用いた。【結果・結論】検出された5種類(p165, p140, p125, p85, p70)のmerlin結合性蛋白質のうち, p125 及びp85の部分配列はそれぞれpoly(ADP-ribose) polymerase (PARP), 及びKu-antigen p85(Ku 85)のそれと一致した。U251細胞, 及びHA-merlin強制発現細胞を用いた抗PARP,抗Ku 85, 抗HA抗体による免疫沈降実験と, 共焦点レーザー顕微鏡解析からも, merlinとPARPとKu分子の細胞内相互作用が証明された。又, merlinの構造異常により, これらの分子との相互作用と細胞内局在が大きく変化することが判明した。merlinとPARPの相互結合部位は, merlin分子の高変異部位, 及びPARP分子の自己修飾部位であり, これによりPARPの酵素活性が上昇し, merlinのN末端側にpoly(ADP) ribosylationが起こることが判明した。merlinはその高変異部位を介してPARPやKuやその他の蛋白質と相互作用することによってお互いの活性を制御し, 細胞内のシグナルに関わっている可能性が考えられる。