ABSTRACT 269(5-7)
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Arbitrarily primed PCR 法による神経膠腫の遺伝子異常の検索と異常遺伝子の単離:斎藤義樹、河内正人、生塩之敬(熊本大・医・脳外)

Detection of genetic alteration in brain tumor by arbitrarily primed PCR and isolation of altered gene : Yoshiki SAITOH, Masato KOCHI, Yukitaka USHIO (Dept. of Neurosurg., Kumamoto Univ. Med. Schl)

[目的]神経膠腫においては複数の癌遺伝子、癌抑制遺伝子の存在が示唆されている。我々はゲノムフィンガープリンティング法の一つであるarbitrarily primed PCRを用い神経膠腫の原因遺伝子を検討した。[方法]神経膠腫、並びに同一患者の末梢血リンパ球からgenomic DNAを抽出し、これを鋳型とし種々のarbitrary primersを用いlow stringency続いてhigh stringencyでPCRを行い、リンパ球とグリオーマ組織で検出されたバンドの強さを変性アクリルアミドゲル上で比較した。これらの異常DNAバンドを抽出、クローニングし、FISH法を用いて染色体上の座位を決定した。また、ヒト脳cDNAライブラリーを用いてcDNAを単離した。[結果]この方法を用いて100から1000塩基対にわたる平均約40個のDNA断片を検出できた。これらのうち神経膠腫組織で欠失の認められるDNA断片に着目し、これをゲルより抽出し塩基配列を決定し、FISH法によりこの欠失が染色体6番短腕に位置することを確認した。さらに、このDNA断片を用いてcDNAライブラリースクリーニングを行い未だ報告されていない新しい遺伝子を単離した。[結論]arbitrarily primed PCRは少量のDNAを用いることで腫瘍組織中のDNA異常の検出が可能であり、DNA断片をゲルより直接に抽出できるため癌組織中の遺伝子の異常を検索するのに有用な方法と考えられた。また、このDNA断片を用いて神経膠腫の責任候補遺伝子を単離した。