ABSTRACT 276(5-7)
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drs遺伝子によるヒト癌細胞株の足場非依存性増殖の抑制:山下敦子,羽倉明,井上寛一(阪大・微研・腫瘍ウイルス)

Suppression of anchorage-independent growth of human cancer cell lines by the drs gene: Atsuko YAMASHITA, Akira HAKURA, and Hirokazu INOUE (Dept. of Tumor Virol., Res. Inst. for Microbial. Dis., Osaka Univ.)

【目的】我々がラット初代培養細胞cDNAライブラリーから分離したdrs遺伝子はラット細胞株においてv-srcなどの癌遺伝子によってそのmRNA発現がdown regulateされるだけでなく、これら癌遺伝子によるトランスフォーメーションに対して抑制的に働く。昨年の本学会において我々は大腸癌などのヒト癌細胞株においてdrs mRNAの強い発現抑制が認められることを報告した。今回我々はヒト癌細胞株におけるdrs遺伝子の癌抑制遺伝子としての機能を検討するためにdrs遺伝子をこれら細胞株に導入し、癌化形質に対する抑制活性を調べた。
【結果と結論】drs遺伝子を組み込んだ組み換えレトロウイルスを作成し、発現抑制の認められたヒト癌細胞株に導入しdrs遺伝子を高発現させたところ、これら細胞株の軟寒天培地中でのコロニー形成能が著しく抑制された。また、この抑制活性に必要な領域を明らかにするためにdrs遺伝子の種々のdeletion mutant を作成し検討したところ、細胞内領域と考えられる膜貫通領域のC末端側が足場非依存性増殖の抑制に重要であることがわかった。現在、さらに詳細にdrs遺伝子による癌化抑制の機構を解析中である。