ABSTRACT 305(5-10)
LECラットp53遺伝子の転写スリップの解析:巴一1、外木秀文1、中田大地1、浜田淳一1、常松泉1、青山哲也1、古内奈留美1、細川眞澄男2、守内哲也1(北大・医・1癌研細胞制御、2癌研病理)
Transcriptional Slippage of p53 Tumor Suppressor Gene in Long-Evans Cinnamon Rats Developing Spontaneous Hepatitis and Hepatocellular Carcinoma: Yi BA1, Hidefumi TONOKI1, Daichi NAKATA1, Jun-ichi HAMADA1, Izumi TSUNEMATSU1, Tetsuya AOYAMA1, Narumi FURUUCHI1, Masuo HOSOKAWA2, Tetsuya MORIUCHI1 (1Div. Cell Biol. and 2Pathol., Cancer Inst., Hokkaido Univ. Sch. Med.)
【目的】転写スリップは遺伝子転写の伸長反応の際にアデニン(A)またはチミン(T)が多数連続している部位に余分なAまたはTがRNAに挿入される現象である。我々は、この現象がラットp53でみられるフレームシフトの原因ではないかと考え、この仮説の立証を行った。
【結果・考察】肝炎および肝癌の自然発症モデルであるLECラットのp53mRNAの変異を酵母アッセイにより解析した結果、Aが6個連続する部位でのAの挿入変異が高頻度に検出された。このAの挿入変異は1)加齢に伴い増加する、2)急性肝炎期のLECラットの肝および腎で著明に増加する、3)DNAサンプルからは検出されない事が示された。以上より、これは転写スリップに起因するもので、その頻度が細胞の状態により大きく影響されることが証明された。他の生化学的データとの比較検討の結果、LECラットでは、銅の過剰蓄積の結果生じる細胞内のoxydative stressが転写スリップの増加する原因の1つであると考えられた。この実験によってほ乳類の野生型遺伝子に転写スリップが生じることが初めて証明された。