ABSTRACT 306(5-10)
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p53 C末端由来環状ペプチドによる変異p53蛋白質の転写活性の回復:吉田哲郎、山崎基生、水上民夫 (協和発酵・東京研)

Restoration of the transcriptional activity of mutant p53 by cyclic peptides derived from the p53 C-terminal domain:Tetsuo YOSHIDA, Motoo YAMASAKI, Tamio MIZUKAMI (Tokyo Research Laboratories, Kyowa Hakko Kogyo, Co., Ltd.)

 ヒト癌の約50%で見られる点変異を有するp53蛋白質は、DNA結合活性及び転写活性を失っている。最近、p53のC末端認識抗体Pab421が、変異p53に作用しそのコンフォメーションを変化させ上記の活性を回復させることが報告された。我々は、p53のC末端由来の部分ペプチドが同様の活性を有し、その活性はペプチドを環状化することで著しく増大することを見出したので報告する。バキュロウイルス発現p53を利用したin vitroゲルシフト系を用いることにより、p53 C末端近傍の配列を有する11-15merよりなるペプチドが、His273あるいはTrp248変異を有するp53蛋白質のDNA結合活性を回復させることを見出した。これらC末ペプチドをジスルフィド結合またはアミド結合により環状化したところ、DNA結合回復活性の顕著な上昇が見られた。このDNA結合活性の回復は、His273のp53変異を有するヒト類表皮癌細胞A431の抽出液を用いたゲルシフト実験でも確認された。さらに、上記環状ペプチドをA431細胞にリポフェクション法で導入することで、p53依存性の転写が回復されることを見出した。これら環状ペプチドはそのままでは抗細胞活性は見られなかったが、エレクトロポレーションにより細胞内に強制導入した結果、細胞増殖抑制活性が見られた。以上の結果は、これらペプチドを修飾や低分子化で細胞に導入することができれば、変異p53に直接作用する抗癌剤になる可能性を示唆している。