ABSTRACT 307(5-10)
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p53による組換え修復制御と遺伝的安定化機構:本間正充1,林 真1,Yongjia Yu2, John B. LITTLE2,祖父尼俊雄11国立医衛研・変異遺伝,2ハーバード大)

Recombinatoinal DNA repair and genomic stability maintained by p53: Masamitsu HONMA1, Makoto HAYASHI1, Yongjia Yu2 , John B. LITTLE2, Toshio SOFUNI1 (1Div. Genet. & Mutagen., Natl. Inst. Health Sci., 2Harvard School of Public Health)

【目的】我々はこれまで,p53変異細胞では非相同染色体間組換えによるLOHや染色体転座が高頻度に観察されることから,p53は組換え修復の制御を介してゲノム安定化に寄与している可能性を示唆してきた(MCB,17:4774-4781, 1997).今回,この仮説を証明するためp53欠損細胞における突然変異頻度とその変異スペクトルの解析を試みた.
【方法】ヒトリンパ芽球細胞株TK6にHPV16のE6タンパクを発現させた5E株,およびベクターのみをトランスフェクションした20C株を用い,チミジンキナーゼ(tk)遺伝子での劣性型突然変異頻度とその突然変異スペクトルを検討した.
【結果・考察】5E細胞におけるp53の量は,TK6および20Cに比べ10分の1以下に低下していた.Tkでの自然突然変異頻度は,5E細胞では他の細胞より5〜10倍も高く,X線に対する誘発突然変異に関しても感受性を示した.両細胞のtk変異体を解析したところ,20C細胞は親株のTK6とほぼ同様の変異スペクトルを示したのに対して(点突然変異30%,欠失型LOH20%,組換え型LOH50%),5E細胞の変異体のほとんどは欠失型LOHと考えられた(80%以上).ゲノム中に生じたDNAの2本鎖切断は,通常,相同染色体間の組換え反応,もしくは再結合反応によって修復されるが,p53欠損細胞では,組換え修復が起こりにくいため,主に後者よって修復され欠失型LOHとして突然変異をもたらすものと考えられる.この結果は,p53が組換え修復機構を介して遺伝的安定化に寄与しているというこれまでの仮説を支持するものである.