ABSTRACT 309(5-10)
Xenopus embryo 系を用いたヒトp53蛋白質のオリゴマー形成と核移行の解析:原 俊子1,2, 小池 克郎1(1癌研・研・遺伝子, 2東大・医科研・分子細胞制御)
Oligomerization and nuclear transport of human p53 protein in Xenopus embryo: Toshiko HARA1,2 and Katsuro KOIKE1 (1Dept.of Gene Res., The Cancer Inst.,JFCR, 2Dept.of Mol.Dev.Biol.,Inst.Med.Sci., Univ.of Tokyo)
p53蛋白質は、核内で4量体として特異的なDNA配列に結合し、細胞周期の制御に関与する遺伝子等の転写を調節することが知られている。しかし、細胞内で多量体が形成される場所については明らかにされていない。我々は、p53オリゴマーの形成が核内あるいは核外で起こるのかを調べる為に、in vitroでp53オリゴマー形成を簡便に観察できる新規な系を作成し、さらにこれを応用した Xenopus embryoの系を用いて解析を行った。主要核移行シグナル(NLSI)配列を欠く変異体と正常なNLSIを持つヒトp53変異体のmRNAをそれぞれXenopus embryoに注入し、whole-mount immunostaining 法で細胞内局在を調べたところ、NLSI依存的に細胞内に分布されることが示された。他方、これら2種類の変異体はin vitroでヘテロオリゴマーを形成することが観察された。もし、p53オリゴマー形成 が細胞質で起こるならば、細胞質内局在性を示した変異体を核移行能を持つ変異体と共発現させた場合、オリゴマーの形成により核内に共移入されることが予想された。しかし、NLSI変異体の細胞内局在に変化は見られず、p53蛋白質は核移行の際にモノマーとして存在していることが示唆され、核移行シグナル配列の変異体はdominant negative効果を持たないことが推察される。