ABSTRACT 311(5-10)
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酪酸ナトリウムによる胃癌細胞のアポトーシスの誘導機序:高田弘一、照井 健、加藤淳二、瀧本理修、村上 系、平山 敦、新津洋司郎(札幌医大・ 医・ 四内)

Mechanism of sodium butyrate-induced apoptosis in gastric cancer cells : Kohichi TAKADA, Takeshi TERUI, Junji KATO, Rishu TAKIMOTO, Tsuzuku MURAKAMI, Atsushi HIRAYAMA and Yoshiro NIITSU (4th Dept. Int. Med., Sapporo Med. Univ. Sch. Med.)

【目的】酪酸ナトリウム (sodium butyrate; SB) は、ある種の腫瘍細胞に対してp53を介してアポトーシスを誘導することを証明し、治療薬としての可能性を示してきたが、そのp53の活性化機序は不明である。野生型p53を遺伝子導入した胃癌細胞ではSBの作用が強力で細胞が死滅するためにその詳細な機序は検討し得なかった。そこでpseudowild-type p53を有する胃癌細胞を用いて、p53の活性型であるとされているSer-392リン酸化やC末端アセチル化について検討した。【方法】1) pseudowild-type p53を有する胃癌細胞株TMK-1 (173:M) を用いた。2) SB処理によるp53の細胞質から核への移行を免疫蛍光染色にて検討した。3) p53結合蛋白は、抗p53抗体 (PAb 1801) による免疫沈降物をWestern blot法で検討した。4) in vivo におけるp53のアセチル化は[H]-acetate を用いて行った。5) p53のリン酸化状態は、抗activated p53 (Ser-392) 抗体 を用いたWestern blot法と32P正リン酸で細胞を標識後、免疫沈降法で検討した。【結果】 SB処理により、1) p53は細胞質から核へと移行した。2) p300、MDM2、HSP70とp53との結合は変化しなかった。3) p53のアセチル化状態は不変であった。4) p53-Ser-392のリン酸化は、処理後1-3時間で約2倍に増加した。【結語】SBによる胃癌細胞のアポトーシスは、p53のSer-392のリン酸化および、p53の核内への移行により惹起される可能性が示唆された。