ABSTRACT 317(5-11)
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神経芽腫におけるp73がん抑制遺伝子の解析:一宮慎吾1, 2、尾崎俊文1、二村好憲1、宍倉朋胤1、砂原正男1、影山肇1、高田尚幸1、中村洋子1、崎山樹1、中川原章11 千葉県がんセ・生化、2 札幌医大・病理部)

Genetic analysis of the p73 tumor suppressor gene in primary neuroblastomas: Shingo ICHIMIYA1, 2, Toshinori OZAKI1, Yoshinori NIMURA1, Tomotane SHISHIKURA1, Masao SUNAHARA1, Hajime KAGEYAMA1, Naoyuki TAKADA1, Yoko NAKAMURA1, Shigeru SAKIYAMA1, Akira NAKAGAWARA1 (1Div. of Biochem., Chiba Cancer Center Res. Inst., 2Dept. of Clinical Pathol., Sapporo Med. Univ.)

p73は、p53がん抑制遺伝子と非常に高い相同性を有し、p53と同様、p21Waf1/Cip1を介した細胞増殖抑制やアポトーシスに関与することが示唆されている。p73遺伝子は染色体1p36.33に位置することが明らかとなったが、小児の悪性腫瘍である神経芽細胞腫において1p36領域が高頻度に欠失していることから、我々はp73が神経芽腫発生に深く関与する遺伝子である可能性を考えた。p73遺伝子内のマイクロサテライトマーカーを用いて、272症例の神経芽腫を対象にp73のloss of heterozygosity(LOH)解析を行った結果、19%(28/151)にLOHが認められた。特に予後因子であるN-mycの増幅を伴う症例の71%(15/21)および孤発症例の34%(20/59)に有意にLOHが認められたことから(p<0.001)、神経芽腫の悪性度と相関してp73遺伝子が欠失していると考えられた。140症例におけるPCR-SSCP法を用いた解析から、2症例にアミノ酸変異を伴う塩基置換を認めた。CATアッセイによる転写活性能を調べた結果、いずれの変異も転写活性能の低下を示し、loss of function mutationの可能性が考えられた。以上から、神経芽腫においてp73が腫瘍の発生や進展に関与していることが示唆された。p73の機能や発現調節については、未だ不明な点が多いが、今後明らかになってゆくp53 superfamilyは、細胞増殖機構の調節や腫瘍発生過程を考える上で極めて重要になると思われる。