ABSTRACT 319(5-11)
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ヒト胃癌・大腸癌におけるp73遺伝子のアレル解析:横崎 宏, 設楽芳範, 藤本淳也, 日山 亨, 中川裕之, 田原榮一(広島大・医・1病理)

Allelic status of p73 gene in human gastric and colorectal carcinomas: Hiroshi YOKOZAKI, Yoshinori SHITARA, Jyun-ya FUJIMOTO, Toru HIYAMA, Hiroyuki NAKAGAWA, Eiichi TAHARA (1st Dept. Pathol., Hiroshima Univ. Sch. Med.)

【目的】神経芽細胞腫の候補原因遺伝子として単離されたp73遺伝子は、1番染色体短腕サブテロメア領域に存在し、p53に極めて類似した構造・機能を有する蛋白をコードしている。神経芽細胞腫培養株では、高頻度に本遺伝子のヘテロ接合性喪失 (LOH) が検出されるとともに、発現の著しい低下が確認され新しい癌抑制遺伝子として注目されている。本研究では、胃癌・大腸癌におけるp73遺伝子異常の役割を明らかにする目的で、その多型解析を行ったので報告する。【材料と方法】検索には手術的に切除された95例の胃癌ならびに69例の大腸癌を用い、癌組織および対応すする非癌部組織より常法に従ってゲノムDNAを抽出し、p73エクソン2のSty I多型領域をPCRにて増幅し、制限酵素断片長解析を行った。【結果と考察】胃癌では、p73 Sty I多型領域においてヘテロ接合性を示したものは32例 (33.7%)であり、これらの内、12例 (37.5%)にLOHが認められた。一方、大腸癌では30例 (43%)がヘテロ接合性を示したが、LOHは認められなかった。LOH陽性胃癌症例の組織型別内訳では、8例 (66.7%)(乳頭状腺癌1例、管状腺癌7例)が高分化型腺癌、1例は充実型低分化腺癌、2例は高分化腺癌を伴った低分化ないし印環細胞癌であり、純粋な低分化型腺癌は1例のみであった。組織学的には、2例で胃型の形質を確認している。以上の検索結果より、p73のLOHは胃の高分化型腺癌の発生に関与する可能性が示唆された。