ABSTRACT 321(5-11)
肺癌におけるp73遺伝子の発現亢進:得地令郎1、橋本毅久1、小林康人2、林盛昭1、林慎一1、西田一典2、中川健3、石川雄一4、土屋永寿1(1埼玉がんセ・研、2臨床病理、3癌研・胸部外科、4病理)
Overexpression of p73 gene in lung cancer: Yoshio TOKUCHI1, Takehisa HASHIMOTO1, Yasuhito KOBAYASHI2, Moriaki HAYASHI1, Shin-ichi HAYASHI1, Kazunori NISHIDA2, Ken NAKAGAWA3, Yuichi ISHIKAWA4, Eiju TSUCHIYA1 (1Saitama Cancer Center Res. Inst., 2Clinical Pathology Div., 3Chest Surgery, Cancer Inst. 4Pathology Div.)
昨年、p53遺伝子と相同性の高いp73遺伝子がクローニングされた。p73は、p21の発現やアポトーシスを誘導することから、p53と同様に癌抑制遺伝子として機能すると推測されている。肺癌におけるp73遺伝子の役割を明らかにするために、ヒト肺癌症例の腫瘍組織と正常組織におけるp73mRNAの発現を比較検討した。肺癌手術症例36例の腫瘍部位および正常部位からRNAを抽出し、RT-PCR法を用いてp73mRNAの発現を検索し、両者で比較検討した。評価可能であった27例のうち25例(93%)の症例において明らかに腫瘍部位でp73mRNAの発現が亢進していた。さらに発現の亢進していた4例についてサザンブロットを行った処、 p73の遺伝子増幅は認められなかった。これらの結果から、肺癌において1. p73は"security guard"として発現が亢進しているか、2. dominant negativeな機能を持つか、あるいは3. p73には癌化と関連する未知の機能を有する可能性が考えられた。