ABSTRACT 326(5-12)
食道扁平上皮がんにおけるFHIT遺伝子の5' CpG island のメチル化による転写の抑制:石崎寛治1、田中 尚1,2、嶋田 裕1、原田英樹1,2、今村正之2(1愛知がんセ・研・放、2京大・医・一外)
5'CpG island methylation of the FHIT gene and transcriptional inactivation in esophageal squamous cell carcinomas: Kanji ISHIZAKI1, Hisashi TANAKA1,2, Yutaka SHIMADA2, Hideki HARADA1,2, Masayuki IMAMURA2 (1Lab. Experimental Radiol., Aichi Cancer Ctr. Res. Inst., 21st Dept. Surg. Kyoto Univ. Sch. Med.)
FHIT遺伝子の異常は種々のがんで高頻度にみられると報告されているが、この遺伝子の不活性メカニズムについてはまだ不明な点も多い。我々は食道扁平上皮がん細胞株23株のFHIT遺伝子の異常を検討した。RT-PCR法で3株に正常より短いmRNAを認め、4株に発現を認めなかった。この4株についてexon 1 周囲の 5' CpG island 内のシトシンのメチル化を bisulfite genomic sequencing で検討した。4株のうち3株にはメチル化が、また残りの1株には exon 1 の 5'側に点突然変異がみられた。他のFHITの発現のある細胞株にはメチル化はみられなかった。さらにメチル化が見られた3株を 5-Aza-2-deoxycytidine で処理すると FHIT 遺伝子の発現が回復し、メチルシトシンの脱メチル化がみられた。35例の食道がん新鮮標本でもメチル化を検討したが、5例にメチル化が認められた。以上より、食道がんにおいて FHIT遺伝子を不活性化するメカニズムとして 5'CpG island のメチル化による転写の抑制も重要であることが示唆された。