ABSTRACT 335(5-12)
癌抑制遺伝子産物p53により誘導される胸腺特異的遺伝子の単離とその機能解析:織田克利1,2、西森博幸1、白土敬之1、二村学1、吉川裕之2、武谷雄二2、時野隆至1,3、中村祐輔1(1東大医科研・ヒトゲノム・シークエンス解析、2東大・産婦、3札幌医大・がん研分子生物)
Isolation of a thymus-specific p53-target gene:Katsutoshi ODA1,2, Hiroyuki NISHIMORI1, Takayuki SHIRATSUCHI1, Manabu FUTAMURA1, Hiroyuki YOSHIKAWA2, Yuji TAKETANI2, Takashi TOKINO1,3, Yusuke NAKAMURA1 (1Lab. Mol. Med., Inst. Med. Sci., Univ.of Tokyo, 2Dept. of Obstet. and Gynecol., Univ. of Tokyo, 3Cancer Research Institute, Sapporo Med.Univ.)
癌抑制遺伝子p53はヒト癌において最も高頻度に変異の認められている遺伝子であり、p53タンパクの多様な生理機能は、転写活性化因子として種々の標的遺伝子の発現調節を通じて行われることが知られている。そのため、p53標的遺伝子を単離することが、癌の発生・進展の機序を解明していくうえで重要と考えられる。我々は、酵母を利用した enhancer trap system により単離された、p53タンパク特異的結合配列を手がかりにコスミドクローンを単離した。このコスミドクローンの全塩基配列 (40,170 bp) を決定し、コンピュータープログラムによる解析の結果、複数の遺伝子を単離した。このうちひとつの遺伝子については、正常p53遺伝子を欠失した癌細胞株に正常p53遺伝子を導入した場合に、発現の誘導されることが確認されたため、さらに解析を進めた。この遺伝子は、染色体11q24に存在する遺伝子であり、Thymusにおいて最も強く発現していることが確認された。T cellのアポトーシスにp53が深く関与していることより、この遺伝子の発現がそのプロセスに関わっている可能性があると考えている。