ABSTRACT 336(5-12)
GML遺伝子導入によってもたらされる細胞増殖抑制機構の解析:上田和毅1,2,三好康雄1,木村康利3,時野隆至4,綿谷正弘2,安富正幸2,中村祐輔1,3 (1阪大・バイオセ・臨床遺伝,2近畿大・医・1外, 3東大・医科研・ヒトゲノムシークエンス解析分野,4札幌医大,がん研,分子生物)
Growth inhibitory function of GML in a glioblastoma cell line:Kazuki UEDA1,2, Yasuo MIYOSHI1, Yasutoshi KIMURA3, Takashi TOKINO4, Masahiro WATATANI2, Masayuki YASUTOMI2, Yusuke NAKAMURA1,3 (1Dept. Clin. Genetics, Biomed. Res. Ctr., Osaka Univ., 21st Dept. Surgery, Kinki Univ. Med. School, 3Lab. Mol. Med., Inst. Med. Sci., Human Genome Ctr., Tokyo Univ., 4Dept. Mol. Biol., Cancer Res. Inst., Sapporo Med. Univ.)
GML遺伝子は正常型p53蛋白によって発現が誘導され,膜蛋白であるGPIアンカー分子に属すると考えられている.GML遺伝子は癌細胞が放射線や抗癌剤によって引き起こされるアポトーシスに重要な役割を果たすことが示されており,その発現の有無が放射線や抗癌剤に対する感受性の指標になりうる可能性が示唆されている.今回,複数の培養細胞株にGML遺伝子を導入することにより,GMLの機能解析を試みた.GMLの発現を認めないヒトglioblastoma由来細胞株T98Gに対してGML遺伝子の導入を行ったところ,その形態の著明な変化と細胞増殖の抑制を認めた.GML遺伝子を導入した細胞は細胞進展性が悪く,突起の形成も低下していた.また,細胞の継代培養を重ねるとGML発現細胞は死滅した.GML発現細胞のdoubling-timeはコントロールの親株細胞に比べて1.5倍に延長しており,時間経過とともに死滅細胞数は増加した.このことから,ある種の癌細胞株に対してはGMLの導入・発現は細胞増殖能の低下及び細胞死を誘導する可能性が示唆された.