ABSTRACT 361(7-1)
カドヘリン−カテニン系接着分子の発現異常と浸潤・転移能との関連性:前村誠1,高尾尊身1,小浜寛也2,小澤政之2,愛甲孝1(1鹿児島大・医・外,2鹿児島大・医・生化)
Relationship of cadherin/catenin complex expression and invasive or mwtastasize ability in human cancer cell lines : Makoto MAEMURA1,Sonshin TAKAO1, Hiroya OBAMA2, Masayuki OZAWA2, Takashi AIKOU1 ( 1Dept. of Surg.,Kagoshima Univ., 2Dept. of biochem. Kagoshima Univ.,)
【目的】これまでにヒト大腸癌細胞株を用いた実験で 高浸潤能,高転移能株におけるE-カドヘリン,α,β−カテニンの蛋白レベルでの発現の低下を報告してきたが,今回発現異常をきたすメカニズムを検討した。【材料と方法】(1)ヒト大腸癌株KM12C( 親株), KM12SM(肝高転移モデル株) からin vitro invasion assayで樹立した高浸潤能細胞株 ( KM12C-3 , KM12SM-4 )を用い,(2)細胞を膜,細胞質,核の各分画に分離し各分画の接着分子の発現をWestern blot(3)各抗体と抗チロシンリン酸化抗体を用いた免疫沈降および,GST/E-cad,GST/α-CN,GST/APCなどの各融合蛋白質を用いて蛋白相互作用(4)細胞増殖因子受容体EGFreceptor(以下EGFR),hepatocyte growth factor receptor protein(以下c-Met)癌抑制遺伝子APC産物の蛋白発現をWestern blot法にて検討した。【結果】 高転移能株で細胞質にフリーの(E-カドヘリンとcomplexを形成してない)状態で存在するβ-カテニンが確認された。高転移,高浸潤能株でc-Metの発現の増大を認め,チロシンリン酸化されたβ-カテニンの発現の増大を認めた。これらのβ-カテニンは mutantのAPCをもつSW480とは異なり,GST/E-cad,GST/APC融合蛋白質では共沈されず,GST/α-CNで共沈され,細胞質に存在するβ-カテニンのプールの状態が異なることが確認された。【考察】細胞接着分子としてだけではなく,増殖因子からのチロシンリン酸化を介したシグナル伝達機構におけるβ-カテニンの役割が癌細胞の浸潤転移能変化の一因に重要と考えられた。