ABSTRACT 363(7-1)
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上皮型CD44分子の肺癌細胞株の腫瘍原性および浸潤における意義:岸宏久、中村祐之、石井源一郎、東守洋、北川元生、張ヶ谷健一(千葉大・医・一病理)

Epithelial variant of CD44 plays an important role in tumorigenicity and invasion of human lung carcinoma cell line :Hirohisa KISHI, Sukeyuki NAKAMURA, Genichiro ISHII, Morihiro HIGASHI, Motoo KITAGAWA and Kenichi HARIGAYA(1st. Dept.Pathol. Chiba Univ.Sch. Med.)

【目的】CD44分子は膜貫通性受容体型糖蛋白質であり、alternative splicing により種々の同位体の形成が起こる。近年、これら同位体の発現と癌の浸潤転移との関連が報告されている。本研究では、ヒト肺癌細胞株を用いて局所浸潤能における標準型CD44H分子とその同位体である上皮型CD44E分子の機能解析を目的とする。【材料・方法】1)CD44陰性ヒト肺小細胞癌株NCI-H82へ発現ベクターに挿入したCD44H、E遺伝子、及び 、vectorのみを導入した遺伝子導入株を作成した(以下82H、82E、82pCI)。2)in vitroの増殖能と固相化ヒアルロン酸(HA)に対する結合能を検討した。3) chemoinvasion assay にてin vitroの浸潤能を検討した。4)各遺伝子導入株をSCIDマウス(8週齢、メス)に皮下移植し、局所浸潤能を4週から6週に渡って経時的に解析した。【結果】1)固相化HAに対する結合能は、82H(48.0±14.9%)、82E(78.0±16.8%)では82pCI (5.0±6.9%)に比べ有意に増強していた。2)各遺伝子導入株間でのin vitro およびin vivoでの増殖能には差は認めなかった。3)in vitroでの浸潤能は82pCIに比べ82Eでは有意に高かった(p<0.05)。 4)in vivo での生着能は82E(100%)が82pCI(79.2%)より有意に高かった。5)in vivo では82H、82E では隣接筋肉組織への浸潤を示したが(41.2%、75.0%)、82pCIでは浸潤は殆ど認められなかった(10.5%)。【考案】肺小細胞癌株に発現したCD44E分子はCD44H分子に比べ高率にヒアルロン酸に結合し、腫瘍細胞における局所浸潤能を増強させることが示唆された。