ABSTRACT 367(7-1)
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浸潤能に依存しないマウス転移モデルとヒト癌での実態:杉野隆、川口隆憲、鈴木利光(福島医大・第二病理)

A murine model for invasion-independent metastasis and its relevance to human cancers: Takashi SUGINO, Takanori KAWAGUCHI, Toshimitsu SUZUKI (2nd Dept. of Pathology, School of Medicine, Fukushima Medical University)

【目的】癌転移の初期のステップには細胞外基質や血管壁の破壊など癌細胞自身の能動的な浸潤能が必須であるとされている。しかしながら我々はマウスに自然発生する乳癌が浸潤能に依存せずに肺に血行性転移をきたしうることを明らかにした。すなわち、原発巣内の癌細胞は、癌胞巣としての組織構築を保ったまま、類洞様に発達した腫瘍血管に包み込まれて血管内に導かれる。我々はこのような転移機構がある種のヒト癌にも起こりうることを想定しているが、今回は肝細胞癌の血管侵襲について検討したので報告する。【材料と方法】静脈または門脈侵襲を示す肝癌の手術例(10例)と剖検例(23例)を用いた。パラフィン切片を基底膜の成分であるtype IV collagenと血管内皮のマーカーであるCD31に対する抗体を用いて免疫染色を行った。【結果】血管侵襲を有する腫瘍は胞巣状構造を示し、間質に類洞様血管が著しく発達していた。癌の血管内への侵入部や血管内の腫瘍塞栓の多く(28/33)は癌胞巣としての組織構築を保ち、周囲を基底膜と血管内皮細胞に覆われていた。癌が血管壁を破壊して浸潤する像はみられなかった。【結語】肝細胞癌の血管内侵入には、マウス乳癌モデルにみられたような癌細胞自身の浸潤能に依存しないメカニズムが関与している可能性が示唆された。