ABSTRACT 368(7-1)
外科的操作による癌細胞浸潤能の増強:中森正二、桧垣直純、左近賢人、永野浩昭、堂野恵三、梅下浩司、門田守人(阪大・医・2外)
Enhancement of tumor cell invasion by surgery:Shoji NAKAMORI, Naozumi Higaki, Masato Sakon, Hiroaki Nagano, Keizo Dono, Koji Umeshita, Morito MONDEN (Dept. of Surgery II, Osaka University Medical School)
【目的】癌に対する外科治療を行う場合、非切除手術に終わった場合などは、開腹操作などの外科的処置を契機に癌の進展や転移が顕著となることを経験することがあり、手術操作が癌細胞の浸潤能や転移能に影響している可能性も考えられる。今回、外科的手術操作による癌細胞浸潤能への影響をIn vitroの実験系にて検討した。【対象と方法】開腹手術を行った20例の患者の腹腔内に留置したドレーンより術後1日目に排液を採取、ドレーン排液の食道癌細胞TE2NSまたは膵癌細胞BxPC3の浸潤能に対する影響をコラーゲンゲルへの浸潤能またはTranswellを利用したin vitro浸潤測定系にて測定した。【結果】1)ドレーン排液による癌細胞の増殖能促進効果は認めなかったが、浸潤能の促進を認め、同一蛋白濃度の患者血清に比し1.5〜3倍高かった。2)ドレーン排液中にHGF、IL-1、IL-6活性の増加を認めたが、HGFの癌細胞浸潤増強効果はドレーン排液の1/3程度であり、IL-1、IL-6には癌細胞浸潤増強効果を認めなかった。3)HGF、EGF、TGFαの運動刺激作用を持つ成長因子に対する中和抗体にて、ドレーン排液の浸潤能増強効果は抑制されなかった。4)ドレーン排液中の癌細胞浸潤促進活性は、熱耐性、トリプシンにより分解される分子量100Kd以上の蛋白である可能性が認められた。【結語】外科的手術操作により、腹腔内に癌細胞浸潤能を増強する物質が産生されることが示唆された。