ABSTRACT 370(7-1)
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食道癌におけるEts-1の発現と浸潤様式に関する検討:佐伯浩司、荒木貢士、江頭明典、川口英俊、大賀丈史、北村 薫、大野真司、桑野博行、杉町圭蔵(九大・医・二外)

Expression of Ets-1 and invasive phenotype in esophageal cancer : Hiroshi SAEKI, Koshi ARAKI, Akinori EGASHIRA, Hidetoshi KAWAGUCHI, Takefumi OHGA, Kaoru KITAMURA, Shinji OHNO, Hiroyuki KUWANO, Keizo SUGIMACHI (Dept. of Surg. II, Med., Kyushu Univ.)

【目的】Ets-1はある種のマトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)や肝細胞増殖因子受容体(HGF recepter/c-Met)の転写を正に制御する転写因子である。我々は食道癌におけるEts-1の発現様式を観察し、浸潤における意義を明らかにすることを目的とし検討を行った。【対象と方法】1) 術前未治療食道癌組織102例を対象としEts-1免疫染色を行った。評価は、癌上皮内進展(中心部、先進部)、浸潤癌(中心部、先進部)の4部位について行った。また、浸潤癌先進部の病理形態をlarge nestを形成するL typeと癌細胞同士の接着性が弱くsmall nestを形成するS typeとに大別して比較した。2) 食道癌細胞株(TEシリーズ)を用いてEts-1 Western blottingを行った。【結果】1) 癌上皮内進展部の陽性率30.5%に比べ浸潤癌では64.6%と有意に発現が高く(p<0.001)、浸潤癌中心部の59.5%に比べ先進部では69.7%と有意に発現が高かった(p<0.005)。さらに、浸潤癌先進部のなかでもS typeでは陽性率88.0%とL typeの62.2%に比し有意にEts-1の発現が高かった (p<0.001)。2) Western blottingにて食道癌細胞株におけるEts-1の発現を確認した。【結語】Ets-1はおもに食道浸潤癌先進部において高く発現しており、食道癌の深部への浸潤において重要な役割を果たしていると考えられた。