ABSTRACT 379(7-2)
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ヒト大腸がんにおける膜型セリンプロテアーゼsepraseの間質線維芽細胞における発現:大谷明夫、佐藤永一、名倉宏(東北大学・院・医・病理形態)

In situ expression of seprase, a membrane-type serine protease, in human colon cancer: Haruo OHTANI, Eiichi SATO, Hiroshi NAGURA (Dept. of Pathol., Tohoku Univ. Sch. of Med.)

sepraseは分子量170-kDa のhomodimericなgelatinase活性を有する膜型セリンプロテアーゼであり、メラノーマ細胞株LOXから同定された。その活性はLOX細胞のinvadopodiaに発現される (J Biol Chem 272:7595, 1997). その97-kDa subunitはfibroblast activation proteinα(FAPα)と高度に相同である。大腸がんでの発現を検索した。【材料と方法】11例の凍結、19例のパラフィン包埋進行大腸がんである。170-, 97-kDaの双方を認識するモノクロナル抗体D8を用い、酵素抗体法を施行した。一部では免疫電顕を用いた。【結果と考察】全例間質の紡錘型細胞が陽性で、がん細胞は陰性あった。また癌の周囲の線維化病巣にも陽性であった。免疫電顕では線維芽細胞の膜が陽性であった。癌のステージとの相関は特になかった。正常粘膜では陰性であった。この結果は、FAPαの結果と同様であり、癌間質での線維芽細胞の活性化現象と判断される。MMP-2, MT1-MMPが癌間質の線維芽細胞で発現される点を考慮すると、癌間質のgelatinase 活性に傾いた環境がさらに明確になる。癌進展論からの考察と癌に対する一種の創傷治癒論の二点から考察する。(Georgetown Univ., Dr. W-T. Chenとの共同研究による)