ABSTRACT 400(7-4)
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Retrovirus-mediated tetracycline-controlled gene expression (Retro-Tet) system を用いたマウス肝発癌過程における vascular endothelial growth factor (VEGF) の役割の解析:
吉治仁志、栗山茂樹、吉井純一、山崎正晴、菊川政次、辻之上裕久、中谷敏也、福井 博(奈良医大・3内)

In vivo role of vascular endothelial growth factor (VEGF) on the development of murine hepatocellular carcinoma cells : Hitoshi YOSHIJI, Shigeki KURIYAMA, Junichi YOSHII, Masaji KIKUKAWA, Hirohisa TSUJINOUE, Toshiya NAKATANI, Hiroshi FUKUI ( Third Dept. of Int. Med., Nara Med. Univ.)

[目的] 主要な血管新生因子であるVEGF の肝癌発育過程における役割を解析するために、生体内で遺伝子発現を tetracycline (tet) によって自在に制御できる Retro-Tet system を用いて、マウス肝癌細胞に導入したVEGF遺伝子の発現を制御し、VEGFの腫瘍発育における役割について検討した。
[結果と考察] Tet-VEGF感染肝癌細胞 (VE-HCC) はtet によって制御される高レベルのVEGFを産生した。(2)VE-HCCのin vitroにおける増殖はControl (C) 群と差異を認めなかった。VE-HCCの培養液は血管内皮細胞の遊走を著明に誘導し、この現象はVEGFの中和抗体の同時投与によって消失した。VE-HCC は内皮細胞の存在下でのみ in vitro における浸潤能の亢進を認めた。(3)VE-HCCはマウス皮下において、VEGF発現レベルに応じて、C群に比し腫瘍発育速度の増大を認めた。腫瘍発育の増加に伴い血管新生も促進された。(4) tet によってマウス皮下腫瘍内のVEGFの発現を抑制すると、tet 投与開始時の腫瘍体積に関わらず腫瘍発育は著明に低下し、ほぼC群と同程度にまでなった。以上の結果より、VEGFは肝癌の発育過程において重要な役割を果たしていることが示された。