ABSTRACT 402(7-4)
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GM-CSF 誘導マクロファージはアンジオスタチン産生を介して癌転移を抑制する:米田純也1,2 、ラケッシュ・クーマ1、ソニヨン・ドン1、羽室淳爾2、I.J.フィドラー 11テキサス大・MD アンダーソン 癌研、2味の素・基礎研)

GM-CSF-Activated Macrophages Suppress Cancer Merastases through Angiostatin Production: Junya YONEDA1,2, Rakesh KUMAR1, Zhongyun DONG1, Junji HAMURO2, I. J. FIDLER1 (1M.D.Anderson Cancer Center, University of TX, 2Basic Research Inst. Ajinomoto Co., Inc.)

プラスミノーゲンのフラグメントであるアンジオスタチン(AS)は、血管内皮細胞の細胞分裂を特異的に阻害し、その結果血管新生を阻害する。我々は癌細胞が産生するGM-CSFが癌組織へ浸潤したマクロファージ(Mφ)を活性化させメタロエラステース (MME) の産生を増加させること、このMMEがプラスミノーゲンを分解してASを作ることを報告してきた。本実験ではGM-CSFを遺伝子導入した癌細胞を用い、GM-CSFを産生する癌組織中にMφが浸潤するか、本浸潤MφのMMEの産生が上昇するか、さらに担癌マウス生体内で作られたASが遠隔組織の転移癌増殖を抑制するかについて調べた。2種類のGM-CSF非産生癌細胞(B16F10 とK1735)にGM-CSF遺伝子を導入し、GM-CSF高産生株(>1 ng/106cells)とGM-CSF低産生株(<10 pg/106cells)を得た。その結果はELISA法並びにNorthernblote 法によって確認された。GM-CSF高産生株の培養上清中でMφを培養すると、MMEの産生量が増加し、さらに、この上清中にプラスミノーゲンを添加すると対象群に比べ4倍のAS活性が認められた。GM-CSF高産生株を皮下移植した場合のtumorigenicity は、親株とGM-CSF低産生株の場合に比べ低かった。GM-CSF高産生細胞の移植群では癌組織へのMφの浸潤度並びに、浸潤Mφ中のMME のmRNA レベルは高かった。B16F10、K1735いずれの癌細胞でも、高産生株を皮下移植した場合にのみ他の癌細胞の静注モデルでの肺転移層の増殖を抑制した。GM-CSF高産生株の担癌マウスの血清中からAS様の分子をWesternblot 法によって確認した。以上よりGM-CSFを産生する原発腫瘍では癌組織へのMφの浸潤が顕著に起こること、この浸潤MφのMMEの産生が増加していることが明らかとなった。また、ASがGM-CSF産生腫瘍の担癌マウスの生体内で作られること、そして転移層での癌の増殖を抑制することが観察された。Mφに体するGM-CSFとM-CSFの対照的な作用についても紹介する。