ABSTRACT 407(7-4)
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プロテアソーム阻害剤によるヒト臍帯静脈内皮細胞の選択的増殖抑制の機構 : 久米田慎一郎1,出口敦子1,戸井雅和2,大村智3,梅澤一夫11慶大・理工・応化、2都立駒込病院・外科、3北里研)

Mechanism of selective growth inhibition by proteasome inhibitors in human umbilical vein endothelial cells : Shin-ichiro KUMEDA1,Atsuko DEGUCHI1,Masakazu TOI2,Satoshi OMURA3,Kazuo UMEZAWA1 (1Dept. Applied Chem., Fac. Sci. Tech., Keio Univ., 2Tokyo Met. Komagome Hosp., 3Kitasato Inst.)

血管新生阻害剤は従来の抗癌剤に比べ、容易に標的細胞に到達させることができる、薬剤耐性が生じにくい、抗腫瘍性スペクトルが広いなどの利点がある。本研究ではヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)にG1期停止作用を示すプロテアソーム阻害剤がHUVECの増殖を選択的に抑制することを見出しその機構を解析した。プロテアソーム阻害剤ラクタシスチンは、HUVECの増殖をIC50, 0.2 μg/ml で抑制するが、ヒト肺線維芽細胞WI-38、ヒト乳癌細胞MCF-7、T47D、MDA-MB-231、ヒト大腸癌細胞WiDrの増殖は、約20倍高い濃度で抑制した。同様に、プロテアソームを阻害するAc-Leu-Leu-norLeu-CHO (LLnL) はHUVECの増殖をIC50, 0.7 μg/ml で阻害し、WI-38および乳癌細胞の増殖を約15倍高い濃度で抑制した。flow cytometry を用いた解析で、1.0 μg/ml のラクタシスチンおよびLLnLはHUVECのS期細胞を減少させるが、同濃度でMCF-7細胞には影響がなかった。プロテアソーム阻害剤はHUVECにp21WAF1を増加させるが、3種の乳癌細胞においてはその増加に約10倍高い濃度を必要とした。一方、HUVECにおいて低濃度のラクタシスチンによるp21WAF1の増加は、アクチノマイシンDやシクロヘキシミドにより抑制されたため、p21WAF1合成の誘導によることが示唆された。
プロテアソーム阻害剤のラクタシスチンおよびLLnLはHUVECの増殖を選択的に抑制し、その機構はより低濃度でのp21WAF1量の増加によると考えられる。