ABSTRACT 415(7-5)
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ウシラクトフェリンの経口投与によるマウス大腸がんコロン26の肺転移抑制とその機構:飯郷正明,久原徹哉,関根一則,津田洋幸 (国立がんセ・化療)

Effects of orally administered lactoferrin on Co 26Lu lung metastasis and underlying mechanisms : Masaaki IIGO, Tetsuya KUHARA, Kazunori SEKINE, Hiroyuki TSUDA (Exp. Phathol. & Chemother. Div., Natl. Cancer Ctr. Res. Inst.)

【目的】ラクトフェリンは鉄含有糖蛋白で、乳汁や涙液などに存在し、細菌感染を防御すると考えられているほか、各種免疫担当細胞の活性化作用などが報告されている。最近、ウシラクトフェリン(bLF)による大腸発がんの抑制やマウス腹腔内および皮下投与によるB16メラノーマの肺転移巣の抑制が報告されている。本研究ではbLFおよびbLF由来ペプチド ラクトフェリシン(bLFcin)の経口投与による転移抑制効果とその機構を、マウス大腸がん由来の高肺転移系腫瘍Co26Luを用いて検討した。【材料と方法】 BALB/c 及びヌードマウスの皮下にCo26Lu細胞を移植した。bLF, bLFcin及びbLFのペプシン分解物(bLFH)を移植後3日目より連日経口投与した。肺転移巣数はアセトン固定後に数えた。血清中bLF濃度測定は抗bLF抗体を用いたELISA法で定量した。bLF投与後の白血球とCo26 Lu-F55細胞を用い、白血球の殺細胞作用についても検討した。【結果】Co26Luの肺転移巣形成に対して、bLF及びbLFHは有意な抑制効果を示した(各々57%,72%抑制)。ヌードマウスでは、bLFによる転移抑制効果は認められなかったが、anti-ASGM1抗体を用いて転移巣数を増加させた場合は、bLF投与により転移巣数は69から52個(中央値)に減少した。血清中bLFは検出できなかった。bLF投与後の白血球はCo26Lu-F55細胞に対し、強い殺細胞効果を示した。抗CD8及び抗ASGM1抗体処置により殺細胞効果は減弱したが、抗CD4抗体では影響しなかった。【結論】bLFは、経口投与でも転移抑制効果を示すことが明らかになった。この転移抑制効果発現にASGM1+及びCD8+細胞の関与が示唆された。(厚生省がん研究助成金による)