ABSTRACT 418(7-5)
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スルファチドによる癌転移抑制機構の解析:宮本大誠1,奥 直人2,島田寿久1,桔川広則2,今福英俊2,鈴木隆1,入村達郎3,鈴木康夫11静岡県大・薬・生化,2静岡県大・薬・放射,3東大・薬)

Sulfatide inhibits tumor metastasis: Daisei MIYAMOTO1,Naoto OKU2, Toshihisa SHIMADA1,Hironori KIKKAWA2,Hidetoshi IMAFUKU2,Takashi SUZUKI1, Tatsuro IRIMURA3,Yasuo SUZUKI1 (1Dept. of Biochem., and 2Dept. of Radiobiochem., Univ. Shizuoka, Sch. Pharm. Sci.,and 3Fac. Pharm. Sci., Univ. Tokyo)

硫糖脂質スルファチドはマウス肝転移性RAW117-H10(H10)リンホーマの肝転移をインビボで抑制する。今回その抑制機構をさらに詳細に解析した。以前より我々はRAW117細胞の肝転移において肝内皮細胞との初期接着にはシアル酸含有糖鎖が重要であることを示してきた。FACS解析の結果、H10細胞と非転移性親株RAW117-Parent (P) 細胞上のsLea糖鎖の分布に顕著な差異が認められ、L-セレクチンの関与は認められなかった。スルファチドはE-、P-セレクチンIgGキメラタンパクへのH10細胞の接着を低濃度(数μM)で阻害し、H10と肝類洞内皮細胞(HSE)の細胞-細胞間接着に対しても接着抑制効果を示した。一方、スルファチドは細胞外マトリックスタンパク質(ECM)成分、特にフィブロネクチン及びビトロネクチンへのRAW117細胞との接着を125μM以上で抑制した。しかし、このECM成分との接着抑制に必要なスルファチド量とスルファチド投与後のマウス血清中のスルファチド濃度とには相関が認められなかった。以上よりRAW117の肝転移での初期接着にはシアル酸含有糖鎖、おそらくsLea糖鎖が関与し、スルファチドの転移抑制には少なくともこの糖鎖と肝内皮細胞上のセレクチンとの結合抑制が重要であることが示唆された。現在、スルファチドによる癌細胞の運動能や浸潤能への影響に関しても解析を加えている。