ABSTRACT 431(8-1)
HER2由来ペプチドによる患者および正常人末梢血からのCTLの誘導:奥川利治1,小畑英慎1,豊田長康1,生田安司2,珠玖洋2(1三重大・医・産婦,2三重大・医・2内)
Induction of cytotoxic T lymphocytes in ovarian cancer patients and normal humans with peptides derived from HER2:Toshiharu OKUGAWA1,Hidenori OBATA1,Nagayasu TOYODA1,Yasushi IKUTA2,Hiroshi SHIKU2 (1Dept.of Obst.Gynec.,Mie Univ.2Dept.of 2nd Int.Med.,Mie Univ.)
〔目的〕癌遺伝子HER2は多数の癌腫で遺伝子増幅または発現の増加が認められ、正常組織ではその発現がほとんど認められず腫瘍特異性が高いことが知られている。我々はこれまでにHER2 由来ペプチドが個体内で免疫原性を持ち、そのペプチドに対するCTLがHER2発現腫瘍を破壊し得ることをマウスを用いての詳細な解析により明らかにしてきた。今回我々は、末梢血由来樹状細胞とHER2由来ペプチドを用いてCTLの誘導を行い、標的細胞に対する細胞障害活性を検討した。〔方法〕1)同意の得られたHLA-A24を有する卵巣癌患者および健常人末梢血由来単核球をGM-CSF 、IL-4存在下で培養し、樹状細胞を調整。2)得られた樹状細胞にHLA-A24結合モチーフを有するHER2由来ペプチド(合成)をパルスし、同一人由来末梢血リンパ球をin vitroで感作した。3)感作リンパ球の各種細胞株に対する細胞障害活性を51Cr遊離試験にて測定した。〔成績〕1)培養により得られた樹状細胞は、CD80を高度に発現していた。2)検討したすべての患者および正常人において、HER2由来ペプチド(p63-71)(p780-788)をパルスして得られたCTLは、卵巣癌細胞株SKOV3/HLA-A3,A28にHLA-A2402のcDNAを遺伝子導入することにより、その細胞障害活性が増強した。3)さらにHLA-A,B欠損ヒトB細胞株CIRにHLA-A2402のcDNAを遺伝子導入したCIR-A24を標的細胞として用いると、それぞれCTL誘導に使用したペプチド(p63-71)(p780-788)をパルスした場合にのみ、その細胞障害活性が増強した。4)HER2由来ペプチド(p553-561)(p1022-1030)をパルスして得られたCTLは、SKOV3-A24に対し特異的細胞障害活性を示さなかった。
〔結論〕HER2由来ペプチド/HLA-A24によりHER2陽性腫瘍において、腫瘍免疫を誘導できる可能性が示唆された。