ABSTRACT 484(9-2)
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可溶性 CD40 ligand のヒト乳癌細胞に対する生物学的効果の検討:平野明夫1、William J. Murphy2, 船越 哲1、浅井 治1、田嶼尚子1、倉石安庸11慈恵会医大・内科3、2National Cancer Institute-FCRDC)

Inhibition of human breast carcinoma growth by a soluble recombinant human CD40 ligand:Akio HIRANO1, William J. MURPHY2, Satoshi FUNAKOSHI1, Osamu ASAI1, Naoko TAJIMA1, Yasunobu KURAISHI1 (1Dept.of Int. Med. III, Jikei Univ.School of Med., 2National Cancer Institute-FCRDC)

CD40はTNF receptor familyに属し、Bリンパ球表面に発現する膜蛋白で、 monocyte, endothelial cell, dendritic cellの他、様々の癌にも発現していることが知られている.我々はこれまでに,マウス抗ヒトCD40抗体を用いて,このCD40刺激が悪性Bリンパ腫を直接抑制する事を in vitro, in vivoにて示した(Blood 83:2787, 1994).今回、ヒト乳癌細胞株を用いた我々の検討で、これらの複数の細胞株でCD40が発現していることが確認され、その発現はinterferon-γとの接触 で増強された.これに対してヒト正常乳腺細胞では、CD40の発現は非常に低いレベルで、interferon-γによる発現増強は認められなかった.また in vitro 感受性試験で可溶性CD40 ligand (srhCD40L)はヒト乳癌細胞の増殖を抑制し、その効果はinterferon-gによって有意に増強され、Annexin-V dye とpropidium iodideを用いたflow cytometry の検討で、srhCD40LによるCD40刺激でapoptosisの誘導が認められた.さらにSCIDマウスにヒト乳癌細胞株を移植したin vivo 治療モデルの実験系でもsrhCD40L治療群はコントロール群に比して有意な生存期間の延長が認められ、srhCD40L がCD40を発現する悪性腫瘍の増殖を直接抑制することが示された.これまでの免疫療法の問題点として,抗体等の異種蛋白を投与すると,患者体内でその蛋白に対する中和抗体が産生される点が挙げられるが,可溶性のヒトのリガンドの治療応用はこの問題を克服する事が期待される.